過去と未来を共振させる21世紀のクラシックウォッチ

高級時計の世界では、いつでも歴史への敬意と未来へと突き進む革新がせめぎ合っている。しかしアーミン・シュトロームは古典機構を蘇らせ、過去と未来を高いレベルで共存させている。

スイスの時計業界において、歴史の長さはそのまま格の高さにつながる。長年かけて培ってきた技術は、他社にはないブランドの強みになるし、王侯貴族から愛されてきたという逸話は品質の裏付けになるだろう。しかし時計の生産現場は日進月歩で変化している。特に工作機械の進化は目覚ましく、以前であれば熟練職人の勘に頼っていた複雑な三次元曲面や微細なパーツも、寸分たがわぬ加工精度で作ることができるようになった。こうなると新興ブランドにもチャンスがある。伝統という足枷がない分、クリエイションが自由になるからだ。

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アーミン・シュトロームの創業は1967年だが、現在のブランド形態になったのは2008年にオーナーが交代し、近代的な工場を作ってから。同社はムーブメントにこだわっており、単に正確に動かすだけでなく、審美的な要素にも力を入れる。その為全てが専用設計であり、自社で開発から製造までを一貫して行う。つまり一切の妥協がないのだ。

オフセンターにセットされた時刻表示をもつシンプルウォッチ。トレンド感のあるブルーダイヤルはステンレススティールケースを使用。

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新作「ピュア・レゾナンス」は、隣接する二つの物体がお互いに影響を及ぼすことで、同じ周波数で振動する物理現象「共振(レゾナンス)」を利用した高精度ウォッチ。時計の精度を司るテンワを隣接させ、共振させることで振り角を安定させ、高精度を実現させるのだ。

このメカニズム自体は17 世紀には考案されており、天才時計師ブレゲもこの現象を利用した高精度時計を作っている。しかし複雑ゆえに機構の小型化は難しく、腕時計に組み込んだ事例は極めて少なかった。その困難をアーミン・シュトロームは自社の力で解決し、しかもメカニズムが美しく見えるようなムーブメントを開発した。

搭載する自社製キャリバーAFR16は、表側も裏側も見事なシンメトリーレイアウトになっており、さらに表面にはコート・ド・ジュネーブと呼ばれる筋目模様を入れている。二つの香箱がそれぞれにテンワや脱進機に繋がっており、お互いの振動を共振させることで高精度を実現させた。

「ピュア・レゾナンス」は一見すると"二針+スモールセコンド"という時計の基本構成であるのだが、その横に二つのテンワを配置することで目をも楽しませる。メカニズムを隠さないというのは、信頼の証であり品質に対して絶対の自信を持っているということでもある。"ピュア"というモデル名は時計作りへの真摯な姿勢を表しており、同時に時計産業の遺産への純粋なる敬意も込めている。そして歴史を受け継ぎ、現代的な形でブラッシュアップし、そして未来へとバトンを渡す......。 ひょっとすると、我々は新たな古典の誕生に立ち会っているのかもしれない。

文:篠田哲生 Words:Tetsuo SHINODA

ピュア レゾナンス ウォーター
手巻き、SSケース、ケース径42㎜、ケース厚12㎜。
800万円(税別予価/2018年4月以降発売予定)

ノーブルスタイリング 
Tel:03-6277-1604
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