コンコルソ・デレガンツァ・京都 2018

3月30日から4月2日にかけて京都離宮二条城においてコンコルソ・デレガンツァ・京都2018が開催された。世界遺産を舞台に、「世界遺産級」の素晴らしいクラシックカーが展示されたのである。

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世界に目を向けると、毎年5月に開催されているコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ(イタリア)、そして8月のペブルビーチ・コンクール・デレガンス(アメリカ)の2つのコンクール・デレガンスが権威あるものとして有名だ。しかし、アジア圏ではコンクール・デレガンスはあまり開催されておらず、これから積極的に世界レベルのコンクール・デレガンスを開催していこうという人もいないのが実情だ。そこで、今回の企画と総合プロデューサーも務めるアートアクアリウムアーティストの木村英智さんが、アジアを代表するコンクール・デレガンスを日本で開催し、いずれは世界に誇れるものに育て上げようと、2016年に初開催したのが、このコンコルソ・デレガンツァ・京都なのである。

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そのために審査員は前記コンクールの審査員や欧州のクラシックカー系ジャーナリストなどを招集。さらに出展車両も日本だけでなく海外からも多くを募り、そのレベルの確保に努めている。

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さて、2回目となる今回のテーマはカロッツェリア・トゥーリングで、1926年に設立された歴史ある名門カロッツェリアだ。エレガントなデザインとともに、スーパーレッジェーラ(超軽量)構造で一躍トップカロッツェリアとなり、イタリアだけでなくイギリスなどのメーカーも手掛けるようになる。しかし、各自動車メーカーが自社内でのデザインや製造を主に行うようになったことなどから、1966年代以降、しばらくの間休止期間に入る。そして、2000年代に入り再びカロッツェリア・トゥーリング・スーパーレッジェーラ社として復活。現在はジュネーブショーなどで毎年のように新作を披露し、少数生産を行っている。

今回のコンクール・デレガンスではアルファロメオ6C2500SSベルリネッタ(1939)やフェラーリ166インテル(1949)、アストンマーティンDB4(1961)といったカロッツェリア・トゥーリングのボディを纏った18台をはじめ、フィアット509デルフィーノ(1926)、フィアット1100フルアスパイダー(1946)、OSCA187S(1957)を含む27台がコンクール対象車として展示された。

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いずれもヒストリーを含め興味深いモデルばかりだが、その中でゴールドのマセラティ3500GTは面白いヒストリーを持っている。現在のマセラティグラントゥーリズモの始祖ともいえるこの3500GT、初代オーナーは女優のエリザベス・テイラーなのだ。彼女の4番目(!!)の夫、エディー・フィッシャーがマセラティにオーダー。その際にシャンパンゴールドの特別色で発注したもので、納車時には赤いリボンがかけられてエリザベス・テイラーのもとに届けられたという。また、セカンドオーナーも俳優のアンソニー・クインであった。

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今回の最大のトピックは、コンクール対象外としてイタリアのムゼオ・ストーリコ・アルファロメオ(アルファロメオ歴史博物館)からアルファロメオC52ディスコヴォランテが来日したことにあろう。ディスコヴォランテ、空飛ぶ円盤と名付けられたそのボディはカロッツェリア・トゥーリングによって空力を考慮し、さらに航空機からインスピレーションを得てデザインされたという。搭載されるエンジンは、2リッターDOHC、最高出力は158hp、最高速度220km/hを発揮した。

現在、ディスコヴォランテはクーペ、スパイダー、前後のフェンダー周りのスパッツ形状をなくしたフィアンキストレッチバージョンや6C 3000など5台が現存している。

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また、このディスコヴォランテをオマージュとしてカロッツェリア・トゥーリング・スーパーレッジェーラ社が2012年のジュネーブモーターショーにデビューさせたアルファロメオ8Cディスコヴォランテも3台登場した。そのうちの1台は全生産8台中8台目のラストモデルで、オーナーの希望によりボディカラーはC52と同じものを使い、また、フロントグリルやBピラーのエアスリットなどもC52をモチーフとしたものに変更されたワンオフモデルである。

世界遺産、しかも普段公開されていない離宮二条城の二の丸御殿中庭に展示されたクラシックカー。そして桜。これらの調和が非常に美しく、表彰式に訪れ門川大作京都市市長は、「クラシックカーは、ボディやエンジンなど多くのパーツについて、デザインや機能を踏まえ様々な会社の職人が協調しながら作られた時代の、まさに芸術品だと聞いています。一方、京都に伝わる伝統のものづくり、例えば二条城も大工、瓦屋、木工などの様々な職人がそれぞれのパーツを担当し、そして見事に融合させていく。このことはクラシックカーと世界遺産二条城、あるいは日本の伝統的なものづくりにおいて共通の哲学だと感じていますので、調和するのでしょう」とコメントし、このコンクールを大いに評価している様子だ。

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さて、甲乙つけがたき展示車両だが、厳正なる審査の結果、次の12台の受賞が決定した。

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・Early Cars to 1951...1946年フィアット1100フルアスパイダー(1951年以前に作られた中で最も優れている車)

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・Late Cars from 1952...1977年ランボルギーニカウンタックLP400(1952年以降に作られた中で最も優れている車)

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・Touring Early Italian...1939年アルファロメオ6C2500SSスポーツベルリネッタ(1951年以前に作られたイタリアのメーカーでトゥーリングのボディを纏った最も優れている車)

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・Touring Classic Italian 1952~1961...1955年アルファロメオ1900CSS(1952年~1961年に作られたイタリアのメーカーでトゥーリングのボディを纏った最も優れている車)

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・Touring Italian class from 1962...1962年マセラティ3500GT(トゥーリングのボディを纏い、1962年以降に作られた最も優れている車)

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・Touring Foreign...1959年アストンマーティンDB4 3.7(イタリア以外のメーカーでトゥーリングのボディを纏った最も優れている車)

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・Auto Italiana elegante (ACI)...1962年マセラティ3500GT(イタリアのメーカーで最も優れている車)

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・Touring Milestone...1949年フェラーリ166インテル(トゥーリングの歴史において画期的な道しるべとなる車)

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・Premio Sakura...1939年フィアット1500トゥーリング(春の二条城に最も似合う車)

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・Craftsman award...1926年フィアット509デルフィーノ(匠の技のエピソードが最も優れている車)

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・People’s choice...1971年ランボルギーニミウラSV(一般投票で最も得票数が多かった車)

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・Best of Show...1951年アルファロメオ6C2500SSヴィラデステ(最優秀賞)

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4月2日に終了したコンコルソ・デレガンツァ・京都2018だが、エントラントの一部は3日から伊勢、伊豆、箱根、大磯を経由し、8日のお昼に東京日本橋の橋上にゴールするプライベートツアー、"ツール・デレガンツァ"に出発した。日本橋には今回のBest of Showのアルファロメオ6C2500SSヴィラデステをはじめ、フィアット1500トゥーリング、ランチアフラミニアスパイダーなど約10台とともに、春の名橋日本橋まつり内で開催されるジャパン・クラシック・オートモービル 2018に参加するクラシックカーを合わせ30台以上が展示される予定だ。

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さて、最後に次回のコンコルソ・デレガンツァ・京都についてお知らせしておこう。主催者によると2019年は4月13日~14日、場所は今回と同じ離宮二条城で開催予定。そして、次回のテーマはカロッツェリア・ザガートに決定し、早速世界各国から参加希望が集まっているというから、今から楽しみである。

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文・写真:内田俊一 Words and Photography: Shunichi UCHIDA、写真:内田千鶴子 Photography: Chizuko UCHIDA

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