2018年7月11日、名古屋のフェリーふ頭には北海道で開催される「トロフェオ・タツィオ・ヌヴォラーリ」に参加する3台の車両とそのオーナーの姿があった。
北海道に向けて旅立つ政本氏とその友人たちである。 名古屋港を出発し、約2日間を太平洋フェリーの『いしかり』で過ごしながら、仙台港経由で北海道苫小牧港へ向かう。 政本さんは今回、3回目の参加になる。
毎年北海道で開催されている「トロフェオ・タツィオ・ヌヴォラーリ・ コン・スケ・北海道ステージ」。イベント名の「タツィオ・ヌヴォラーリ」 は1930年代に活躍した伝統的なイタリア人レーシングドライバーの名前だ。
彼の名誉を称え、イタリアのマントヴァ市では毎年9月の第3週に世界中から300台ものクラシックカーを集め、ラリー競技の"GP-ヌヴォラーリ"が開催されている。日本では北海道をステージに2000年よりスタート。今回で18回目を迎えるクラシックカーラリーだ。
イタリア車が好きだという政本進午さんは、2017年はアルファロメオのコンレロで出場。2018年は1946年スタンゲリーニ1100sに乗り込み、3組の仲間と一緒にフェリーで赴き参加をする。今回編集部は名古屋で出港を見送り、2日間の船旅を終えた一行を北海道で出迎えた。
【気に入ったらとことん一途】
約20年前に購入した1946年スタンゲリーニ1100sで参戦する政本さんとメカニックの犬塚さん。「良いと思ったら、手放さないんです」という言葉の通り、所有してる3台のクラシックカーはすべて20年以上の時を共にしている。一途な車好きだ。
定刻通りの午前11時、北海道苫小牧港に太平洋フェリー『いし かり』が到着。ほどなく3台の車たちが連なって港を出発した。向かうは翌日のラリーでスタート地点となる千歳市だ。走ること1時間ほど、本日の宿まで到着した。「本番は明日からなのに、あんまりにも気持ちよく走ってきたものだから、もうラリーが始まっているような気分になりました」と話すのは、政本さん。同じ太平洋フェリーの便を利用した参加者が3組に増え、より満喫したという船内での過ごし方を伺った。
「フェリーは濃縮された時間を過ごすことができるのでいいですね。仕事や他の余計なことを忘れられる、 特殊な時間だと思います。ぼくは自分の時間をゆっくり過ごしたいので、満喫できました」そう語る政本さんは、旅行に行く際には必ず本を持ち歩いて読むのだという。それからビールを嗜んで一人の時間を楽しむのが旅のお決まりだ。一方で、今回の船内では仲間たちとの車談義もたくさん交わしたのだという。
【夫婦で車を楽しむ】
所有するクラシックカーは全てご自分でレストアをしているという森さん。 愛車は1928年式 アルファロメオ6C 1500スポーツ。2012年にスイスの知人から譲り受けた一台だ。一番好きな車はランチアアウレリアだが(もちろん所有している)その設計者ヴィットリオ・ヤーノにより手がけられた6Cにも魅力を感じたという。
一緒に参加した森至布さんは「フェリーで過ごす間、車のことをとことん語り合うことができました。一緒に車イベントに出ていても、実際のところあまり長く会話をする時間がないのです。船の上で濃いお話しができてよかったですよ」と語った。車のイベントでは走った後のパーティーコンテンツとしてライブや表彰式など様々な催しが用意されている分、車について仲間どうしでじっくり話す時間が実は限られている。そのため、マニアックな情報交換を行うにはまだまだ時間が足りないのだという。
そして奥様でありコ・ドライバーの森智子さんは、「今回の乗船中、今までにないくらいじっくりとコミュニケーションをとりました。過去の車事情やライフスタイルの好みなどをよく知ることができましたね。同じ趣味を持つメンバーでずっとこの調子でおしゃべりをしているので、楽しいですよ」と話してくれた。
【はじめてのフェリー】
今回が北海道ラリー初参加となる神谷さん。数多く所有していた車たちを整理し、現在は新型のモーガンスリーホイラー1台を大切に所有している。今回は車仲間として約40年来の付き合いだという政本さんに誘われて参加を決めた。フェリーでの旅も初めての体験だ。
フェリーならば、寝ていても進むし、夜が明けたら目的地に到着する。 それに加えて愛車は車両甲板に積んであるので、到着したら一緒に降りてすぐに出発できる。政本さんの言葉を借りるならば、"人馬一 体"ならぬ"人車一体"である。
フェリーに乗って日常生活の様々なしがらみから開放され、降り立った地で思い切りドライブを楽しんで、 生きる力を得て帰ってくる。そんな非日常を感じる、ストーリーのある旅ができることが、他にはないフェリーの魅力である。同好の士と共に過ごす海の上でのひとときが、他にはない濃密な時間であることは言うまでもないだろう。
文:オクタン日本版編集部 Words:Octane Japan 写真:奥村純一 Photography:Junichi OKUMURA
【宇宙をテーマにした新造船が2019年に就航】
平成元年10月にデビューをして2018年現在運航中の「きたかみ」が2019年1月、約30年の歴史に幕を閉じる。また、そのタイミングにて、新船「きたかみ」がデビューすることが決まっている。
現行のきたかみは、温かみのある赤を貴重とした船内イメージだが、ニューきたかみのテーマはなんと"スペーストラベル"。その名の通り、宇宙船を連想させる白を貴重とした船内だ。現在建造中の新造船の完成イメージをひと足お先にお見せしよう。
プロムナードにはスペース空間が映し出され、階段を上がると宇宙に吸い込まれていくようなデザインだ。海の上にいながらも宇宙を感じるという斬新なコンセプトで、他にはない船旅を体験いただけることだろう。
太平洋フェリー予約センター
札幌:011-281-3311 仙台:022-388-8757
東京:03-3564-4161 名古屋:052-582-8611
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※年中無休(年末年始除く)
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