店内右手、クラッシュ加工を施したガラスのルーバーで仕切られた奥にサロンスペースとバーカウンターがある。壁面にはワインセラーがあり、今後、顧客のボトルもキープするとか。
ラグジュアリーウォッチの最高峰リシャール・ミルが、本丸である銀座ブティックを移転オープンした。他を圧倒するスケールでブランドの世界観を全面に打ち出し、ラグジュアリーの軌跡に新たな道を方向づけたのだ。
初冬の鈴鹿サーキットを今年も往年のヒストリックレーシングカーが埋め尽くした。この「鈴鹿サウンドオブエンジン2018 」をスポンサードするのがリシャール・ミル。創立20年に満たないにも関わらず、いまやラグジュアリーウォッチの頂点に立つブランドだ。だがそれはきらびやかに贅を凝らすような時計ではない。伝統的なクラフツマンシップに、F1や航空宇宙産業で用いられるハイテク技術や先端素材を融合することで生まれる、時計のスーパーカーだ。そしてこの秋、日本での成功の歴史に新たな1頁を加えた。2007年に出店した銀座ブティックをさらにスケールを増して移転オープンしたのである。
通常はバックヤードに置かれるウォッチメーカールームも店内に設ける。スイスでトレーニングを受けた熟練の技術者が常駐し、迅速な作業はもちろん、技術的な質問にも的確に答える。
ブラックで統一されたファサードを飾るのはわずかブランドロゴのみで、ウインドウには時計をモチーフにしたディスプレイを据え付けている。店舗のある銀座・並木通りは、いまや日本のウォッチストリートとして多くの有名時計ブランドが軒を連ねるが、この時計店らしからぬ佇まいにも関わらず、その存在感はひと際目を引く。さらに店内に入ると、約190㎡という広さを贅沢に使ったフロアが広がる。中にはバーカウンターやサロンスペースの他、それらと対面し、通常はバックヤードに置かれるウォッチメーカールームを設ける。これも技術への自信であり、来店客の目を楽しませる工夫だ。
だが一方で、時計の展示は極めて少ない。というのも、生産数が限られ、現在は入荷と同時に売れてしまうのが実情だからだろう。ではなぜこれだけのスペースが必要だったのか。この場で提供されるのはブランドの世界観であり、それこそが顧客やファンの満足のためであるからだ。ラグジュアリーの本質とは、製品だけで完結するのではなく特別な体験を人々に提供できるもの。リシャール・ミルはそれを実践する稀有なブランドということだ。たとえば冒頭のレースイベント然り。そして銀座ブティックこそ真の「ラグジュアリー」なのである。
今回の移転オープンに合わせ、2 本の日本限定モデルも登場した。人気のRM 014をベースに、ベゼルとケースバックにレッドとブルーを採用した特別仕様だ。それぞれ限定数は8本と7本というから目にするだけでも幸甚だ。銀座ブティックに訪れれば、そんなチャンスに遭遇するかもしれない。
RM 014 Japan Limited Model
RM 014 Tourbillon Japan Blue
RM 014は、ベゼルとケースバックにシリコン層に特殊な樹脂を浸透させ、各層の繊維の方向を45度ずらしながら積み重ねて、圧力釜で熱処理を行ったクオーツTPT®を採用し、強度と軽量性、独特の多層パターンを備える。日本限定は、海洋をイメージしたマリンブルーで仕上げた。手巻き、ケース径50× 42 . 7mm。予価4170万円(税抜)7本限定
RM 014 Tourbillon Japan Red
海洋をテーマにしたRM 014は、トノーケースを甲板に見立て、表面にデッキパターンを刻み、リュウズはウインチ、針は船体、さらにトゥールビヨンや香箱ブリッジに到るまでヨットのイメージを再現する。日本限定は、日本の国旗をモチーフにした赤と白を採用する。手巻き、ケース径50×42.7mm。予価4170万円(税抜)8本限定
文:柴田 充 Words:Mitsuru SHIBATA
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