ベントレーでしか実現できない気高いモデル Bentley MULSANNE SPEED

「期間限定でいまミュルザンヌスピードの広報車があるのですが、もしよろしければ少しお乗りになられませんか?」ある朝、ベントレージャパンのマーケティングPR責任者の横倉典氏から嬉しいお誘いのメールが届いた。もちろん断るはずがない。

まさに万障繰り合わせて試乗の時間を作った。目的はただ一つ。ベースのミュルザンヌとミュルザンヌスピードとの違いを体感することである。スペック的に両車の違いはわずか。スピードが最高出力で25 馬力、最大トルクで80Nm 上回ること。車重は2770 ㎏と同じ。

試乗にあたり、以前ミュルザンヌに乗ったときのインプレッションノートを開きながら、自身の語彙の貧弱さに頭を抱えてしまった。「重厚、しっかり感、留めないトルク、いつまで走っても疲れない」。ノートにはそんな在りきたりの表現しか踊っていないのだ。言い訳だがこのクラスでは比べるべきライバルは少ないし、ノーマルでもホイールベースは3270 ㎜!(日本にはEWB 仕様は用意されていない)、さらに車重は2770 ㎏もあるので「重厚」でないはずがない。まぁ25 馬力ほどハイパワーになったとはいえ512馬力が537 馬力になっただけ。つまり5%のパワーアップだから正直なところ大きな違いを期待していなかった。

さて、試乗日の未明にパーキングからミュルザンヌスピードを引っ張り出し、極端に交通量の少ない一般道で、まずはその大きなボディサイズに慣れることに専念する。そしてしばらくしてから首都高速のETCゲートをくぐった。アクセルをクッと踏み込み車線変更。大きな舵角を与えなくてもノーズが速やかに正しい方向に向かっていく。アレっ?何だかいいぞ。何台かの車両を追い越しながら、ジャンクションでのちょっとした渋滞を経て、今度は少し強くアクセルを踏み込んでみた。驚いた。軽いのだ!

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6¾ℓのV8エンジンはどこまでもスムーズだが、低回転から湧き上がる圧倒的なトルクのおかげで高い回転域を強いる必要がまったくない。8 段AT のシフトチェンジはしっとりとしてなめらか。ステアリングフィールは一定速度以上になると軽快感が増してきてさらに安定する。専用の21インチホイールは硬過ぎず良好。ドライブ・ダイナミクス・コントロールは、コンフォート、B(ベントレー)、スポーツ、カスタムの4 モードから選べるが、結果的にベントレー推奨のBモードのバランスの良さが気に入った。全高はベースのミュルザンヌと同じ1530 ㎜なのだが、どうやらスピードのサスペンションは10mmほど低められているらしく、この大きな躯体を気持ちよく走らせるにはベストなセッティングなのだろう。

心地良いドライビングを楽しんでから、車を停めてじっくりと眺めてみることにした。エクステリアでは、ブライトウェアがダークティント仕上げになっていて、迫力面でかなり効果的。インテリアでは新デザインとなったダイヤモンドキルト仕上げの2トーンシートとスポーツギアレバーがBentleyレーシングの伝統を彷彿とさせる。

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走るほどに身体に馴染んできて愉快になってきた。ブランドxクオリティの乗法で測ってみると、実にすごい車である。カタログに記されている加速タイムや最高速度はまるでハイスペックマシン顔負けのパフォーマンスであるが、ただしミュルザンヌスピードは単なるスポーティカーではない。礼節をわきまえた大人が、ときどきスポーツマンシップも味わうことができるハイエンドサルーンに他ならないのだ。

フォーマルでもカジュアルでも使い分けができる車だが、できればスマートでおしゃれな本当のジェントルマンに乗ってもらいたい。

ベントレー・ミュルザンヌ・スピード(2019年モデル)
エンジン: 6752ccツインターボチャージドV8 
最高出力:395kW / 537 PS @ 4000rpm 最大トルク:1100Nm @ 1750rpm 
ドライブライン:後輪駆動 トランスミッション:8段AT
車両重量:2770kg 燃料タンク:96リッター 
全長×全幅×全高:5575×1925×1530mm
ホイールベース:3270mm タイヤサイズ:265/40ZR21 
メーカー希望小売価格(税込):3855万円

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