クラシック・レンジローバーの市場価値はなぜ上がり続けるのか? 人気コレクターカーの魅力を探る

Photography Justin Leighton


"端正な" オリジナルモデル

もちろん主役はレンジローバーである。バハマゴールドのボディは輝くばかりだ。ビーチで太陽をいっぱいに浴び、海からの反射で最小限のメタルワークと最大限のガラスエリアをきらめかせている。この夢のような光景にもまったく無関心な様子だ。飾り気のない工業製品でありながら、不思議な美しさがある。では、1970年代初頭にタイムスリップした気分でレンジローバーを存分に楽しもう。
まずはドアハンドルである。「何を大げさな」と思うかもしれないが、このハンドルにすべてが集約されているのだ。直立して分厚く、工業製品然としているが、個性的で虚飾とは無縁。機能性が徹底的に追求されている。

車内に上がってみると、何よりもその開放感と座席の高さに圧倒された。シートの位置自体は現在の標準とかけ離れているわけではない。しかし、ウエストラインが非常に低く、太もものすぐ上から窓が始まるのだ。ピラーもほっそりしており、安全上は難あり(現代の考えでは)とはいえ、視界は抜群だ。また、ドアトリムのパッドは最小限(ダッシュボードには皆無)で、ヘッドレストもない。助手席との間隔は広く、そこを巨大なトランスミッショントンネルが通る。従って、現代の車にはおよびもつかないほどゆったりとした空間がある。

装備は最低限だが不足はなく、むしろこうあるべきだと感じる。計器類を小さなポッドに収めてダッシュボードの上に載せたのは実にうまいアイデアだ。Lhdの場合はそこだけ反対側に移せばいい。センターコンソールも実用的で、気持ちのいいシンメトリーを形成している。ギアレバーはコミカルなほど長く、短いトランスファーセレクターをいっそう小さく見せている。隣の灰皿は、あとから取って付けたように見えるが「その通りだよ。分かるだろう、設計チームは誰ひとりタバコを吸わなかったんだ」とロジャーはいう。ここにも少人数の手で直接開発されたことが表れている。どのアイテムにも逸話があり、こうなった理由があるのだ。


1970年には灰皿さえ後付けだった


最新モデルはヘッドアップディスプレイも装備する

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words David Lillywhite

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