2018年でデビュー50周年を迎えたジャガーを代表するサルーン、XJシリーズ。歴代モデルの数々を乗り継ぎながら、イギリス キャッスル・ブロムウィッチからフランス パリを目指すグランドツアーが開催された。
1968 年、今からちょうど50 年前に開かれたパリショーにて、ジャガーXJシリーズはデビューした。サー・ウィリアム・ライオンズが企図したのは「Eタイプのように走るセダン」。それまでのサルーン、すなわちSタイプ、420 、240/340 、420G 、という4 車種を1 台に統合する意欲作だった。
その挑戦は大いに支持され、後にシリーズ1と呼ばれる初代に始まって、シリーズ2( 73 年〜)、シリーズ3( 79 年〜)、XJ40( 86 年〜)、X300( 94 年〜)、X308( 98 年〜)、X350( 2002 〜)、X351( 09年〜現在)に至るまで、XJシリーズはこの半世紀、8 世代に渡り、ジャガーのフラッグシップサルーンであり続けたのだった。
そんなXJの50 周年を記念し、歴代全てのXJを試しつつ、最新ジャガーの生まれ故郷キャッスル・ブロムウィッチからドーバー海峡をフェリーで渡ってシリーズ初披露の地パリを目指すという、豪勢なドライブツアーが企画された。
筆者がまずステアリングを握ったのはXJ40( 88 年式ダイムラー・ソブリン3.6 )だった。J ゲートでその名を馳せたXJ40は、サー・ウィリアム・ライオンズが開発を見守った最後のジャガーでもある。フネのようにふわりと動きつつ左右への動作は軽快で、飛ばせば飛ばすほどスポーティになっていく。
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続いてシリーズ3 に乗り変えた。ピニンファリーナにリスタイリングを依頼し、新たな法規に対応したうえで後席の居住性をより高めた。試乗車は87 年式ジャガーXJ6ソブリン4.2で、じわりじわりと湧き出るトルクがとても心地良い。ハンドリングはXJ40よりもさらに柔らかく、軽やか。そのくせよく真っ直ぐ走る。
ランチのあと、憧れのシリーズ2クーペ=XJCを駆ることに。75 〜77 年の2 年間のみ造られたXJCの生産台数は10486 台で、最もレアなXJだ。試乗車は78 年式XJC12 。エンジ色にブラックビニルトップが洒落ている。
アイドリングではエンストしたかと思うほど静か。軽く踏みこんだだけで力強く走り出す。どこまでもずるずると力が出てくるような感覚に心を奪われた。中立のはっきりしないステアリングフィールはまさにクラシックカーで、にも関わらず好みの舵角を決めたなら、そこからはぶれずに曲がっていく。とにかく中速域における乗り心地が素晴らしく、なるほど英国カントリーロードの生まれであると納得する。
グッドウッドサーキットで隊列撮影をこなしたのち、いよいよシリーズ1 に乗り換えてポーツマスを目指した。73 年式デイムラーダブル6ヴァンデンプラ・ロングホイールベース。ワークスレストアの施された個体というだけあって12 気筒エンジンのフケは素晴らしく、ウルトラスムースにトルクを吐き出す。アシの動きも柔軟で素晴らしい。50 年前の衝撃的なデビューも容易に想像がつく。
ドーバーフェリーで1 泊。フランスはサンマロからはいきなり最新モデル、それも北京ショーでデビューしたばかりの記念車「XJ50 」のディーゼルを駆る。わずか千回転から最大トルクが供給されるから、軽く踏むだけで面白いくらいに好きな速度へと達する。手応えも確かなハンドリング性能と相まって、スポーツサルーンとしての初代XJ の血を濃く受け継いだラグジュアリーカーであったと再認識。
ル・マンはサルトサーキットにも立ち寄ったのち、08 年式デイムラースーパーV8のX350に乗り込んだ。スタイルはもちろんのこと、意のままに動くという乗り味は正にXJ の血脈だ。
パリはもう間近。最後に駆ったのが01 年式XJ8のX308だった。94 年のパリショーでX300 が登場すると、98 年にはジャガー初となるV8 搭載モデルX308 へと進化をはたす。いずれもシリーズ3までのXJ デザインへとモダンに回帰したスタイルが大いに受けたものだ。
これが実に良かった。シリーズ1 から続くXJらしさというべき特徴を全てに色濃く滲ませつつ、現代においても十分に通用する快適さと性能を併せもつ。滑らかなエンジンフィールと軽妙なハンドリングはシリーズ1 に込めたコンセプトの集大成だと思えたほどだ。
自分で買うとしたら? XJC12 の上物があればそれにこしたことがないけれど、現実的にはX 308 だろう、などと想像しつつ、最新のX351だって悪くないと、すっかりXJにハマった自分がいた。
文:西川淳 写真:ジャガーランドローバージャパン Words:Jun NISHIKAWA
Photography:Jaguar Land Rover Japan
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