試乗記|モーガン 4/4 新車でヘリテージを味わうという輝き

モーガン 4/4

ヘリテージを感じさせる見た目を持ちながら、その走りは至って快適。一度乗ったら、ひとを病みつきにさせる車。風を感じながらスポーツカーとして乗ることもできるのだ。

クロームのハンドルを捻ってドアを開ける。身体をねじ込んでシートに座ると、英国スポーツカーらしい足を前に投げ出すようなポジションが妙に落ち着く。フロントウインドウ越しに見えるボンネットフードには、左右合わせて58個のエアアウトレットのスリットが目に入ってくる。他ではなかなか味わうことのない独特の景色。モーガンは、走り始める前にすでに「儀式」が始まっているのだ。



4/4のデビューは1936年。以来80年以上経ったいまでも元来の製造方法を頑なに守り続けている。スチール製のラダーフレームをもつオープンボディ。ドアやサイドシル、リアフェンダーなどには硬くて耐久性の高いアッシュという木材を使用し、そこにボディとしてアルミ板を打ち付ける構造。正に人間の手によるハンドメイドである。 この4/4(4輪4気筒の意味)に搭載するエンジンは伝統的に英国フォード製エンジンが採用されてきたが、現在のエンジンはフォーカスなどに使われる1.6ℓ直列4気筒DOHCだ。そして組み合わされるトランスミッションはマツダNC型ロードスターの5段MTとなる。

試乗では東京-御殿場を高速で移動してから、箱根や富士を巡った。走りは、やはり抜群に面白い。苦手と思っていた高速道路も存外に快適。少雨で幌を被せたまま走行したが、多少の雨風の侵入があるものの風切り音もそれほど気にならないレベル。直進安定性も悪くない。御殿場で雨が上がったので、これまた「儀式」のように両サイドの窓を外して専用バッグにしまい、幌を畳んでフルオープンで走り始めると、これはまったく別物の本格的スポーツカーのテイストを存分に味わうことができる。


スペース的に余裕のある整備性の高そうなエンジンルーム。それほど回転域を高く保たなくても十分に楽しく走れる。


足まわりはフロントがスライディングピラー独立懸架で、リアはリジッドの板バネ式。こんな古典的なサスペンションでも高速からワインディングまで心から楽しめるのは軽さゆえである。車重は795㎏しかないので112psでも十二分。腰のポジションがとことん後輪軸に近いので、カートのようにぶん回すことも可能だ。ミニフリークには懐かしいモトリタのハンドルは重過ぎず滑らか。疲れることなく約300㎞を走破した次第。

クラシックモーガンを既にもっていて、あえて新車のモーガン4/4を購入する方もいるらしい。機関系の安定性に往時の楽しい走りがそのままついてくるのだから、その選択も意味がある。乗ってみると病みつきになる1台だ。

モーガン 4/4
ボディサイズ:4010x1630x1220mm ホイールベース:2490mm
車重:795kg 駆動方式:FR 変速機:5段MT
エンジン型式:直列4気筒DOHC(英国フォード製)
排気量:1595cc 最高出力:82kW(112ps)/6000rpm
最大トルク:132Nm(13.4kgm)/6000rpm 本体価格:766万8000円

文:堀江史朗 写真:尾形和美 Words:Shiro HORIE Photography:Kazumi OGATA


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