フェラーリ・デイトナを駆って古き良き時代のプレイボーイを気取ってみる

Photography: Paul Harmer

フェラーリ・デイトナ以上にグランツーリスモという呼び名が似合う車はない。素晴らしいコンディションのデイトナを駆ってフランスの『ランスギュー』サーキットまで走り、40年前のプレイボーイのライフスタイルを再現してみたい。

大陸旅行に理想的なスポーツカー

プレイボーイといえば、美女を口説いたり、ルーレットでディーラーを打ち負かしたりするのが"仕事"である。誰でも一度ぐらいはそんな自分を夢見たことがあるはずだ。

そしてプレイボーイに欠かせないのがスポーツカー。今で言うならフェラーリF12のような凄い2シーター・グランツーリスモに惜しみなく金を使い、カジノがあるような素敵なリゾートへの"足"として、そんな車を気軽に走らせるのだ。そう、40年前の本物のプレイボーイならば、きっと、フェラーリ365GTB/4デイトナを選んだに違いない。

素晴らしく気持ちの良い日曜日の朝、私はカメラマンのポール・ハーマーの手伝いをしながら、オーナーであるマシュー・ラング氏のデイトナがルートナショナルの並木道を轟音とともに走るのを眺めている。本当は私自身が革のドライビンググローブをはめてステアリングホイールを握っているはずなのだが、代わりにいまはフェラーリに憧れる少年のように、素晴らしい音に耳を澄ませている。たとえ分別のある大人であっても、デイトナが地平線に向けて加速していく姿に感動しないわけがない。ジョアッキーノ・コロンボ設計のV12エンジンのサウンドがコンクリートの壁に反響し、低回転時の排気音を増幅している。回転が上がったと思った時には、マシューはもう並木道から開けた場所に出てしまっており、エンジンはもっと素敵な甲高い音を奏でている。離れて聞くとボリュームは当然小さくなるが、その澄んだ音質は変わらない。いつシフトしたのかがはっきり分かるほど、静かな朝だった。

私たちはドーヴァーでマシューと合流した。できるだけ豪勢な客船で海峡を渡り、1972年「トゥール・ド・フランス・オート」のコースの一部を足早に辿ってから、贅沢なリゾートホテルにチェックインする予定。もちろんそこは、プレイボーイがカクテルドレスとハイヒールを身に着けた、輝くばかりの"美しい友人"と過ごすためのホテルだ。

ところで私にはプレイボーイの"資格"がないのは言うまでもないが、このデイトナは違う。今までにデイトナに乗る幸運に恵まれなかった人は、ただこのスポーツカーを力強いだけで荒々しい車だと思いがちだ。だがドーヴァーでP&Oフェリーに乗るために現代の車に囲まれて並んでいるデイトナには、低く引き締まったスタイルに気高ささえ感じさせられる。猛々しさは微塵もないのだ。



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編集翻訳:高平 高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Keith Adams

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