海外ドラマ「The Persuaders ダンディ2華麗な冒険」のアストンマーティンDBS

Photography: Martyn Goddard

1971年、10代の少年は誰もがドラマ「The Persuaders!(ダンディ2 華麗な冒険)」の主人公、ブレット・シンクレアになりたがっていたそしてその中のひとりは、本当にその夢を実現したようだ

ハンサムカー

鮮やかなバハマイエローのボンネット。その先に広がる紺碧の地中海と山合に伸びる遥かなる道。そして6気筒エンジンは、低く心地よいサウンドを鳴り響かせていた。車はアストンマーティンDBS。いま、ここに足りないものといえば、ヒッチハイクするべき美女たちと、そしてサウンドトラックである。

私のそんな気持ちを一番理解してくれるのは、オーナーであるエド・ストラットンだろう。アメリカへの移民である私が「ダンディ2華麗な冒険」へ憧れを抱いたのは、もうこのドラマが古典というジャンルになってからのことである。英国ジェントルマンであるブレット・シンクレアと共に、ヨーロッパ中のリゾートやカジノを訪れた羨望のアストンマーティンDBS。その車を今、異国情緒溢れるコモ湖畔で運転できることに私はとても興奮し、そして同時に光栄だと感じている。

"The Persuaders「ダンディ2華麗な冒険」"を知らない世代のために、簡単にあらすじを紹介しておきたい。ストーリーは至ってシンプル。とあるハンサムなコンビが世界を股にかけて活躍する典型的な冒険物語。そのコンビを演じたのは、当時、大人気を誇っていたトニー・カーチス(アメリカの億万長者「ダニー・ワイルド役」)と、ロジャー・ムーア(英国の貴族「ブレット・シンクレア役」)であった。

国際的なプレイボーイのブレットとダニーの活躍の場は、どこも美しいロケーションであった。軽快なトークを楽しみながら、難解な犯罪をズバッと解決。それでもなぜかいつも美女を追いかけることを忘れない。

そして彼らが仕事の"足"としていた車がいつも素晴らしい。ダニーがディーノ246GT、ブレットはアストンDBSだった。007スタイルばりのアクションと、軽快なノリとユーモア、そして数々のカーチェイスに美女たちとの戯れ。男がハマる要素が満載である。

オーナーのエド自身はこう語る。「最初のオンエアを視た頃は多感な青春時代でした。登場する車がとにかく好きで、14才の私は彼らのライフスタイルに憧れました。そしてDBSを手に入れるという目標が、無意識にも私の人生のモチベーションになっていたのだと思います」

モチベーションの効果は大いにあったようだ。エドは現在そのアストンDBSそのものを手に入れ、憧れのライフスタイルも、たまに味わうことがある。今年の春はコモ湖の豪奢なリゾートホテルで開催された世界有数のコンクールのひとつである「ConcorsoVilla d’Este(コンコルソ・ビラ・デステ)」に招待された。「この車は実際に使われた本物ですか?」と何度もたずねられるほど、彼とこのDBSは注目を集めたらしい。ちなみに、この1台は、バハマイエローのDBSの中で、わずか一台だけ製造された右ハンドル仕様である。

エド・ストラットンには音楽の才能があり、まずはパフォーマーとしてキャリアをスタートさせ、その後は制作側に移行。現在も音楽ビジネスに携わっている。

自動車への興味も同時に育っていき、 1976年に初めて手に入れた車はアルファ・スパイダーであった。「パッと見は美しかったけれど、錆が酷く、わずか1年で手放さなければなりませんでした」とエドは語る。

次に購入したのもアルファロメオの 1750GTV。その後は新旧様々な車を乗り継ぐ。その中には2台のディーノも含まれていたが、それらはオリジナルではなかった。エドはいつも、できるだけ状態の良いものを探してきた。彼は言う。「見た目がいくらきれいでも、備わっている機能が使えなければ意味がありません」


オーナーのエド・ストラットンは、コンコルソ・デレガンサに備えて約100時間もDBSの準備に費やした。しかし、車は乗ってこそ価値があるとの持論をもち、イベント会場へは何時間掛かっても自走する


トランクフードにトニー・カーチスとロジャー・ムーアの大切なサインが残っている。


テレビ向けにV8仕様のホイールと装飾が施されていたが、ブレット・シンクレアの車は実はノーマルの6気筒エンジンを搭載していた


外観と比べるとインテリアは落ち着いているが、オリジナル・スペックに忠実にレストアされている

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編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE 原文翻訳:数賀山 まり Translation:Mari SUGAYAMA Words: Dale Drinnon

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