Groundbreaking Treasure Chest ~もはやセダンの概念を超えた~

右ハンドルを味わうため英国の地へ
2018年ジュネーヴ・サロンで華々しいデビューを飾った新型プジョー508。間もなく日本でファーストエディションが発売されるのに先掛け、オクタン日本版編集部では右ハンドル仕様の使い勝手を確認するため、いち早く英国でのテストを行った。クリスマスの準備で喧々たる初冬のイギリスの空は、それでもいつもと変わらぬ厚い雲で覆われていた。

 イギリス・イングランドのウェスト・ミッドランズ州にある都市、コヴェントリーにあるプジョー・シトロエン・オートモビルスの近代的な社屋。

取材のスタートはコヴェントリーにあるプジョー・シトロエン・オートモビルスのUK本社。コヴェントリーはロンドンから北西約160㎞に位置する都市で、英国自動車産業の中心地として栄えた街だ。近隣の街並みは旧いレンガ造りのタウンハウスが目立つが、小高い丘の上にある近代的な社屋の建築形式は周辺環境と上手に調和していてユニークだ。



用意されたテスト車両は鮮やかなアルティメット・レッドのプジョー508GT。現在このGTというグレードの日本導入予定はない。ただしGTは最高出力こそ日本に導入されたファーストエディションに勝る225psを発揮するものの、最大トルクはそのファーストエディションの2.0ℓ BlueHDiターボディーゼルエンジンの400Nmに譲る、300Nmとなっている。だがディーゼル仕様のGT BlueHDiとは異なる乗り味の、鼻先の軽さが際立つ。日本仕様の1.6ℓ PureTechガソリンターボを積むAllureも同様と思われる。

今回のテストは4日間におよぶロング・リード取材。コヴェントリーから南に下ってバース、そしてまた北上してエイボンやクルーに立ち寄るなど、高速から街中、田舎道に至るまで、タフな英国の路面でしっかりと性能を把握することができるはずだ。

イングランドのウィルトシャーにあるカッスル・クームという人口350人程度の小さな町。14世紀の市場の盛隆と共に栄えた場所で、小さな教会やマナーハウスなどが点在する。

いつまでも眺めていたい優艶さ
さて、多くのジャーナリストから「カッコよくなった」という好評価を得ている新型プジョー508だが、実車を目の前にすると、1404mmのごく低い車高から醸し出されるオーラに、まず打ちのめされる。
プジョーのフラッグシップモデルである新型508は欧州で企業が従業員に貸与する、いわゆるカンパニーカー需要を見込むのではなく、美しいものを好む真の大人が思わず唸って欲しくなる、そんなパーソナル色の強い4ドア・サルーンを目指したという。

先進運転支援システムのセッティングのレベルが一気に高まった。アクティブクルーズ、レーンキープアシストなど総合的な制御が効いている。

移動手段だけの車ではないという潔さ。妥協を排したその出来栄えは、第一印象として響いてくるパッションから既に挑戦的である。優美な曲線というよりアスリートの筋肉のように削り込まれた、力強くエレガントなデザイン。ショルダーラインからリアにかけての面処理もクーペ的で繊細だが、ほぼ垂直に立ったコンケーブ・グリルの両端にヘッドライトが奥目がちに睨みを効かせつつ、ボンネット前端に「508」の車名ロゴが配された様子は、往年の504クーペにならったものだ。リアからの眺めは、横一文字のガーニッシュがワイド感を強調する。サイドアングルから眺めた時にドア周りには余計なグラフィック線がなく、クーペのようにウィンドウの形状をキレイに見せる。牙のようなLEDの日中走行灯は賛否があるかもしれないが、新しい508のデザインはあらゆる角度から計算し尽くされた、完成度の高いデザインといえる。
 


試乗車は日本のファーストエディション同様、前後共にナッパレザーシートが装備。フロントシートはもちろん後席もホールド性に優れ長距離でも疲労が少なかった。異形ステアリングホイールはグリップ感覚がスポーティで操舵がしやすい。



ファーストエディションにも採用されるアウタースライドのパノラミックサンルーフはルーミーで前後席すべてのパッセンジャーに快適。ハッチバックドアの開口部は広く、大きなスーツケースも収容可能。日本のファーストエディションと同様の235/40 R19タイヤ &と19インチアロイホイールの組み合わせは予想以上に乗り心地が良いものだった。また、日本仕様のGT BlueHDiは18インチなのでこちらも良いと予想できる。



低く構えた伸びやかなプロポーションだけでなく、静的質感の点でも新型プジョー508は躍進著しい。特に内装はウレタンフォームとレザー、クロームといった異素材を、合わせ目が見えないデザインとせず、きっちり緻密に合わせた。要はストレートに質感の高さで勝負しているのだ。ちなみにドライバーズシートに収まる前に、後席へアクセスしてみるのも一興だ。リアのドアを開けると、まるでインナーシェルのように、カーボン風処理の装飾を施された極太Cピラーが、サッシュレスのクォーターウインドウ下から現れるのだ。じつは新しい508は4ドア・クーペ風の外観ながら、実用的なハッチバック形状をもつ。あえて「4ドアファストバック」と命名したこともうなずけるほど、造形的な美しさと同時に高いクォリティを両立させている。


猫アシのフィーリングは健在
走り始めてまず感じたことは高い密閉性とボディ剛性である。どんな走行状態でもリアドアやハッチゲート周りから軋み音が聞こえてくるようなことは皆無で、落ち着いている。また動的質感の点で結果的に何より感心させられたのは、カメラで約20m先の路面を読み込んで4輪の減衰力を積極制御するアクティブ・サスペンションを採用しているにも関わらず、1420kgとDセグメントのサルーンとしてはきわめて軽量に収まっている事実だ。



手元のセンターコンソール上でドライブモードを選択して、コンフォートやスポーツなど、シャシー・セッティングを変える。ワインディングでスポーツ・モードにすると、ステアリング中立付近のシャープさが明らかに増し、初期のロール量が抑えられる。プジョーの代名詞ともなったi-Cockpitの操作性の良さも特筆だ。ヘッドアップインストルメントパネルのデジタルグラフィックはいたずらな細工がなく視認性が高い。8インチのタッチスクリーンやトグル形状のスイッチの使い勝手も悪くない。また、小径ステアリングホイールはスポーツ心を掻き立てるもので、俊敏なハンドリング操作にもぴったりとしていた。



攻め込んだ時のノーズの動きは軽快。だがスパっと切れ込んでいくというより、しなり感を伴うじんわりとした旋回フィールであり、正確なトレース性と路面のうねりをいなすような優しさが持続する。鋭くもなれるが、ドライバーを駆り立てるというより、そのマインドに沿ってくれる、そういう奥行あるロードホールディングなのだ。



英国は狭く入り組んだ市街地や、大型車やコンパクトな車が混走する高速など、いろいろなポイントで日本の道に似ている。先代プジョー508より若干ダウンサイジングが図られたとはいえ、
全長4750mmの中に広々としたパッケージングが実現されている。8ウェイの調整機能が付くフロントシートはもちろん、後席もルーフに窪みを作りヘッドクリアランスを大きく取ってあるので、ハッチバックとは思えないほどヘッドクリアランスに余裕がある。また全幅1847㎜はサルーンとして大き過ぎない、ほど良いサイズといえる。縦列駐車時のバックカメラビューや、高速の追い越しなどで、サイドミラーの死角を警告する機能、コーナーの見切りなど、右ハンドル仕様の出来に不足はなく、どんな条件でもドライバーの思うがままに運転することが可能であった。試乗したこのGTはシリーズ最強版とはいえ、決してスペックでハイパワーを主張するタイプではない。だが1420kgという軽い車重と最新のアイシンAW製8段ATとのマッチングがよく、低速域からとにかく軽快。市街地を出て高速巡航に入っても、再加速時の回転フィールの上質さ、シフトマナーの滑らかさなど、パワートレイン全体の仕事ぶりに余裕があり、その静かさと控えめさに驚かされるほどだった。

センターモニターのタッチスクリーンと、その下のトグル形状のスイッチは用途が分かれていて使いやすい。ガングリップ形状のシフトノブ。手前にはフルパークアシスト、シフトの前方にはドライブモードのスイッチが配置される。インテリア全体の質感が高く、異なる素材を美しくまとめている。

ドライバーズシートで特別な時間を
もうひとつのグッド・サプライズは、先進運転支援システム(ADAS)関連の機能が練られ、なかなか完成度の高いレベル2にまとめられていたことだ。まず修正舵つきのレーンキープアシストだが、コーナーが曲がっている方向と反対に修正舵を切るような怖さがない。またアダプティブクルーズコントロールや自動ブレーキアシストが、交通量の多い高速道路上で前方が詰まった時も、制動力の立ち上げ方が自然で、前後に頭を揺すられる粗雑さがない。つまりバックグラウンドで使っても、ADAS機能が嫌な介入をしてきたと意識させないタイプなのだ。機能として主張せず、あくまでドライバーのサブに徹するところが、プジョーらしい。

都心ではなかなかメリットを感じる機会の少ないナイトビジョンだが、UKの郊外では野生動物が突然現れることも少なくない。あれば助かる装備の一つである。


10スピーカーを擁するFOCALのオーディオシステム。ナチュラルで澄んだサウンド。
 
コヴェントリーへの帰途に就くころになって、オーディオのサウンドを楽しむことを忘れていたことに気付く。デバイスを繋ぎFOCAL®の Hi-Fiシステムに耳を傾けてみた。10ヶ所に配されたスピーカーから、臨場感ある質の良い音響が車内を満たしてくれた。実用性と日常性を鑑みたドライバーズカーとして、またDセグ・サルーンのきわめて軽快な表現として、新型プジョー508は独特の高い完成度をもつ特別な一台となった。
 
文:南陽一浩、オクタン日本版編集部  Words:Kazuhiro NANYO , Octane Japan
写真:櫻井朋成 Photo:Tomonari SAKURAI


テスト車 プジョー 508 GT
ボディサイズ:4750mm x 1847mm x 1404mm
ホイールベース:2793mm

駆動方式:8段EAT
エンジン型式:1.6ℓ 直4DOHCターボエンジン 
最高出力: 165kW(225hp)/5500rpm 
最大トルク: 300Nm/2750rpm
総排気量:1598cc
車重:1420kg

プジョー508 ファーストエディション
ボディサイズ:4750mm x 1847mm x 1404mm
ホイールベース:2793mm
駆動方式:8段EAT
エンジン型式:2.0ℓ BlueHDi 4DHOCターボディーゼルエンジン
最高出力: 177ps/3750rpm 
最大トルク: 400Nm/2000rpm
総排気量:1997cc
本体価格:577万円

プジョーコール
0120-840-240

プジョー

プジョー508の公式ページはこちら



RECOMMENDEDおすすめの記事