スーパーカー"ランボルギーニ・エスパーダ"の切れ味を試す3日間のロードトリップ

ランボルギーニ・エスパーダ

エスパーダは、スペイン語で「剣」を意味する。果たしてランボルギーニの4シーター・スーパーカーは、今でもグランド・ツアラーとして鋭い切れ味を保っているのだろうか? イタリアまでのロードトリップでそれを確認する

火曜の午後

昼時のミランの環状道路。私たちは約束の時間に遅れていた。交通量は多いが車は流れている。私たちが乗ったブラッドオレンジの1970年ランボルギーニ・エスパーダは、名前の由来となったスペインの剣のように鋭い走りで追い越し車線を切り裂いていく。目の前を遅い車がふさいだ。後ろに黒いポルシェ・カイエンが迫ってくる。SUVの高圧的な態度で、私たちを無理矢理どかそうと、エスパーダの繊細なガラスのハッチバックから数インチにまで迫って脅してくる。前の車が路肩に寄って止まり、目の前が空いた。5速から3速にシフトダウン、アクセルを踏み込み、V12を解き放つ。エスパーダはこれに低い咆哮で応え、長い船首がわずかに持ち上がった。レブカウンターの針が、6000、6500、7000へと進み、速度計が一瞬で110mphに跳ね上がる。あっけにとられたカイエンを置き去りにして、エスパーダはミサイルのようにアウトストラーダを貫いていった。なんて秀逸な車なんだ。

この旅に出る直前にオーナーからメールが届いた。『Evo』誌を創刊したハリー・メトカフは、ランボルギーニの50周年ツアーのためにイタリアまで1987年製カウンタックQVを運転していく。最近購入したエスパーダも同時に持っていきたいということで、私がその"貧乏くじ"をひく幸運を授かったのだ。ハリーからの追加のメールは短く要点を突いたものだった。「知っての通り、最高回転数は7900rpmだが、レブリミッターはない。レッドゾーンを試してみたまえ。最高のサウンドだから!」

V12ランボルギーニで3日間のロードトリップへ出掛けようというときに、なんともうれしいメッセージじゃないか。プランもルートも決まっていない。やるべきことは、火曜の昼までに車をミラノに届けることだけ。43年前のランボルギーニに乗れて、レッドゾーンを試す許可までもらったのだ。承知しないはずがなかった。

土曜日

昨夜、少しの時間だが初めてエスパーダを運転した。第一印象は、クラッチ、ステアリング、ギアシフト、すべてが重い。だが、そのスタイルにはとにかく驚嘆する。GT40と同じくらい低く(実際には約7インチ高いが)、しかも長く滑らかな弧を描いたデザイン。コンセプトカーのマルツァルーきっと皆さんもミニカーを持っていたことだろうーから派生した車と考える人が多いが、それより、ジャガーのEタイプをベースにしたピラーナに影響を受けた部分が多いようだ。

それにしてもハリーのカウンタックは間違いなく素晴らしい。私はエスパーダの控えめな様子、特に、初期のモデルに装着されたミウラタイプのアロイホイールが気に入った。実用性の面でも広々としたガラスのおかげで、車内は明るく開放的だ。ミウラやカウンタックではこうはいかない。しかもハリーのエスパーダには、珍しくルーフいっぱいにアクリルのティンテッドガラスがはめ込まれている。当時こんな仕様のエスパーダはモナコ后妃グレース・ケリーのものだけだったが、この車には1980年代に後付けされたらしい

エスパーダのもう1つの優れた点が、たっぷりとしたラゲージスペースだ。今回の旅の相棒は、Octaneのビジネスマネジャー、ジェイン・タウンズエンド-エムズ。編集者のデビッド・リリーホワイトが締め切りに追われたため急きょ交代したのだが、とんでもないサイズのスーツケースをもってきたものの、撮影機材と共にすっぽりと飲み込んだ。こんなに大きな車で南仏の峠道を本当に走り切れるのか心配になる。しかもふたつの燃料タンクには、無鉛ハイオクガソリンが93ℓも入るのだ。

まずはフェリーに乗るドーバーまで、イギリスの高速道路でテストを試みるが、こんな時に限って事故のために通行止め。いきなりとんでもない渋滞にはまってしまった。ところが本当に驚いたのだが、エスパーダの水温計は、ほとんど動かないのだ。3.9ℓV12は、700rpmでじっと40分間も我慢してくれ、1度もその音がブレることはなかった。安定したアイドリングは周囲を不安がらせることもなく、誰もが携帯のカメラやサムアップであいさつをしてくれた。

ロンドンを離れる頃には、フェリーに乗り遅れそうな時間になっていた。3速にシフトチェンジして、いよいよV12を自由にしてやるときだ。交通量は減り、エスパーダが存分に走れるスペースがある。ナビで確認すると、嘘のように速度計は正確無比。なんとも優秀なマシンではないか。100mphでもリラックスしたもので、エンジンは最高回転数の半分強で回り続け、神々しいばかりのサウンドを響かせている。ぎりぎりでドーバーに到着し、待ち構えたフェリーにまっすぐ乗船。私たちが最後の1台だった。

フランスに渡ってからは、シャンパーニュ地方のレピーヌまで80mphでの気楽なクルーズとなる。エスパーダは期待にたがわず、燃料とコーヒー補給だけで、北フランス平野を軽快に駆け抜けていく。ほかにオートルートを行き交う車はほとんどなく、あらためてフランスの厳しい速度制限を恨めしく思う。だが、少なくとも燃費面では好適だ。満タン状態からのエスパーダの燃費は平均で約5.2km/ℓで、ウェーバー6基の大食漢にしては悪くない。

そして夕陽が沈む頃に、70年代のポルシェ911 2.7RSが故障して路肩に止まっているシーンに出くわした。三角停止板の近くにたたずむドライバーの姿。私たちは無事を確認した後に、軽く手を振って通り過ぎた。古いイタリア製スーパーカーを運転していて、911に対してメカニカル面で優越感を味わえることなど、そうあることではない。



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