スーパーカー"ランボルギーニ・エスパーダ"の切れ味を試す3日間のロードトリップ

ランボルギーニ・エスパーダ


日曜日

静かなレピーヌ村にあるオ・ザルム・ド・シャンパーニュは、一晩の休息には完璧なホテルであった。クロワッサンとカフェオレで腹ごしらえをして、再びエスパーダのV12に火を入れる。チョークはないので、アクセルで数回キャブレターに燃料を送ってからキーを回すと、エンジンは驚くほど静かにスタートした。現代のスーパーカーではおなじみの騒々しいエキゾーストノートはない。そして再びオートルートへ。ルート・ナシオナルをのんびり行ければ更に素晴らしいのだろうが、夜までに南フランスに着きたいのだ。

フランスは、80mphで走り切るには大きすぎる国だ。数時間も淡々と走り続けていたところへ、最新スーパーカー3台が轟音を上げて抜き去っていった。きっとサービスエリアで時間をつぶしていたに違いない。こうなると、せめて1、2マイルだけでも、追いかけずにはいられない。初めてエスパーダを100mph超まで追い込んでみる。そのレスポンスは素晴らしく、V12の多重シンフォニーがテールパイプから高々と鳴り響いたのだ。この速度域でも、エスパーダには揺るぎない安定感がある。そして面白い発見があった。換気のために上部で留めているリアサイドの窓を開けていたのだが、100mphを超えると留め金が吸い込まれて、自動式のように閉まるのだ。

グルノーブルで高速を降りてから、街中で道に迷った。山岳路を抜けていく有名なナポレオン街道(N85)を見つけたのは夕方近かった。そしてついにエスパーダが本性を現す時が来たのだ。

これまで、この大きなフロントエンジンが山道で手に余るのではないかと不安だった。ハリーの車は初期型であり、シリーズ2最終型に装着されたパワーステアリングが付いていない。市街地での切り返しは重過ぎるし、幅広のバルーンタイヤを操るには勘が必要になる。だが、いったん本気になって走り出すと、エスパーダは実に素直な挙動を示す。手に余る感じは微塵もなく、荷物や燃料でリアタイヤにかかる荷重が、フロントのV12とちょうどうまくバランスを取ってくれる。ナポレオン街道の流れるような直線をつなぐ無数の急カーブをエスパーダで力強く抜けていくと、ニュートラルな感触がとても心地良く、ステアリングの重さも完璧で反応も素早い。V12のトルクがスムーズに間断なく前進を支え、回転を維持するために繰り返しシフトダウンする必要もない。だが、この素晴らしいエンジンの”美しい嘆き”が、峡谷の山肌にこだまするのを聞きたいがためだけに、回転数を高めにキープすることになるのだ。

山の霧で路面が滑りやすくなってきた。ヘアピンにオーバースピードで突っ込めば、どういうことになるかは誰でも想像がつく。だがエスパーダは、敬意を持って扱いさえすれば、ドライバーに牙をむくことはないという安心感を匂わせてくれる。そしてヘアピンから次のコーナーを目指して飛ばしていると、逆に乗り心地の良さにも気づかされた。この大きいボディと長いホイールベースが、凍結でひび割れた路面の嫌な粗さを吸収するのに役立っているのだ。これは新たな発見であった。

ここ何年もの間で最高のドライブを終え、我々はコルという山間の村に滑り込んだ。そこはとても魅力的な場所で、私たちは村のブラッセリーで、その店で最後のオーダーをした。今日は400マイルを走破したが、ライトの故障と空腹で腹の虫が鳴り出さなければ、もっと遠くまで行けたはずだ。



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