スーパーカー"ランボルギーニ・エスパーダ"の切れ味を試す3日間のロードトリップ

ランボルギーニ・エスパーダ


月曜日

ギャップの街を抜け、イタリア国境に近づくにつれて、天気が悪くなり霧雨になった。エスパーダの空力に優れるデザインとフロントウィンドウの撥水加工があっても、霧の細かい水滴は光を反射させて、ドライバーの疲れを誘発する。

低回転域だとV12は以前ほどスムーズでなくなってきた。時折、軽くスロットルを開けたときに一瞬遅れるようになってきたのだ。だが高回転域では十分元気なので、速度を上げて雪の残る高地を抜ける。5月初旬だというのに、開いているカフェはなく、岩だらけの風景に寂しさは募る。

イタリアに入って無数のヘアピンを抜け、滑りやすい路面を慎重に走り続けて、ようやく営業中のバーを見つけた。そこには勢いよく燃える暖炉まである。霧に浮かぶエスパーダを外に残して店内へ。そこでアメリカーノを何杯も飲んで体を温めていると、風変わりなロードムービーを演じる俳優になったような気分を楽しめた。

今晩の宿は、ミラノの南にある友人の家。高速道路でサボナまで行き、海沿いにジェノバまで走って北に進路を変えてからミラノへと向かう。あと数時間で200マイルほど走破しなければならないのだが、そんなときに太陽が顔を出して、美しい地中海の風景に迎えられた。高速道路を離れてワインディングを楽しみたいという誘惑に駆られるが、それはまた別の時に取っておこう。

イタリアのアウトストラーダも、今や速度監視カメラに支配されている。アイルランドのパブが禁煙になったのと同じくらい文化と相反することに思えるのだが、まずはおとなしく走るしかない。ただうれしいことに景色は壮観だ。道は、山を回り込み、トンネルを突き抜け、優美な高架を行く。昨日までのフランスのように変化に乏しい景色ではない。1970年代のスーパーカーを軽快に走らせていると、旅の魅力が蘇ってきた。映画"ItarianJob"(邦題『ミニミニ大作戦』)のオープニングテーマ"On Days LikeThese"を歌いたくもなる。

火曜日

ミラノのリナーテ空港へ向かい、そこでエスパーダのキーを返して旅は終わる。だが飛行機で帰国の途につく前に、マッシモのフェラーリ308GTBの撮影に同行するくらいの時間は十分にある。

ロードトリップが終わりに近づいたが、我々は心に残る思い出をもうひとつ作ることにした。田舎道を走っていると、とても長い直線道路が現れたのだ。マッシモは筋金入りのカーマニアだから、エスパーダのV12サウンドを全開で聞かせれば喜ぶはずだ。そこで私は彼の横に出て追い抜きをかけ、アクセルを床まで踏み込んだ。生粋のイタリア人であるマッシモは、もちろん即座に同じ反応を返してきた。ほんの数秒間ではあったが、全開のランボルギーニとフェラーリがサイド・バイ・サイドで加速し、合わせて7ℓのサラブレットエンジンが最上のサウンドを奏でたのだ。

それから2時間ほど。エスパーダの鍵をほっとした表情のハリーに返した。3日間で1248マイルを走破し、それもずいぶん飛ばしたものだが、このエスパーダが消費したオイルは0.5ℓだけ。燃費も、最低でギャップ付近の山道での 3.8km/ ℓから、最高はフランスの高速での5.9km/ℓ、平均では5.0km/ℓであった。ハリーは、続く数日間のツアー中、車が壊れた友人にこのエスパーダを貸し、その後、英国まで自分で運転してきたそうだが、その間、接触不良で燃料ポンプに問題が出た以外は、一切トラブルがなかったという。エスパーダは、1週間で3400マイルを走破したのだ。ああ、なんとも素晴らしいスーパーカーじゃないか。


1970年ランボルギーニ・エスパーダ
エンジン:3929cc、オールアロイ製V型12気筒、DOHCウェーバー製40DCOEキャブレター×6基
最高出力:350bhp/7500rpm 最大トルク: 40kgm/5500rpm
変速機:前進5段MT+後退、後輪駆動 ステアリング:ZF製ウォームローラー
サスペンション:独立式ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、テレスコピックダンパー、アンチロールバー
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク 重量:1635kg 最高速度:250km/h 0-100km:6.5秒

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