オースティン7、シボレーM8D…マクラーレンを象徴する名車と50周年記念モデル

ブルース・マクラーレンのオースティン7



勝利の方程式は通じないこともある。常勝マクラーレンの苦い経験
1960年代においてはフォーミュラ3からフォーミュラ1まで、幅広いレースカテゴリーに参加するコンストラクターが珍しくなかった。しかしながらマクラーレンは、F1以外のジュニア・フォーミュラにはごく短期間参戦しただけで、しかも実際のチーム運営は自分たちでは行わなかった。




「ブルース・マクラーレンから、1968年シーズンのワクスF2チームを指揮してくれないかと話を持ちかけられたのさ」とチェッカードフラッグ・チームを率いたグラハム・ワーナーは当時を振り返る。「ブルースは本当にいいやつだった。私たちはロビン・ウィドウズをマクラーレンM4Aのエースとして起用、もう一台にはブルースが高く買っていたニュージーランド出身のグレアム・ローレンスが乗ることで契約を結んだ」「それに加えて、2台のマクラーレンF3カーを準ワークスチームとして参戦させることになった。私はスロットカー・メーカーの"スカレックストリック"と交渉をまとめ、5000ポンドのスポンサー料を得た。彼らはF2のほうには興味を示さなかったが、両方のシリーズに参戦することを決めたんだ。F3カーにはスカレックストリックのロゴを貼ったが、あれはゴールドリーフカラーのロタスが初めてグランプリに登場する3カ月前だった。F2はチェッカードフラッグ・マクラーレン・レーシングチーム、F3はチェッカードフラッグ・スカレックストリック・レーシングチームとしてマイク・ウォーカーとイアン・アシュレイを出場させることになった」

1968年。シーズン開幕戦は3月末のバルセロナのモンジュイック・パークだったが、マクラーレンF2カーはそのわずか数日前に完成、当然シェイクダウンテストなどする暇もなくスペインに送られてきた。ジャッキー・スチュワートが勝ったそのレースで、ウィドウズは一周遅れの7位でフィニッシュ。いっぽうローレンスは予選からチームメイトより明らかに遅く、決勝では途中でリタイアに終わった。

ウォーカーはF3の最初のヒートでポールポジションを獲得、何とかチームの面目を施した。だが決勝では10周目までリードしていながら、エンジンがストップしてスピンアウト。アシュレイのほうはもっと不運でトラブルで予選に出走することもできなかった。その一カ月後のオウルトンパークではウォーカーが勝利を挙げたが、その時がピークでその後調子は下がるいっぽうだった。

ウィドウズはF2で健闘していたが、しかしマシンは競争力がいまひとつ。ローレンスは何度か予選落ちを喫した後、シーズン半ばで降ろされてしまった。「ブルースはタスマン・シリーズでの活躍を見て彼を抜擢したようだが、ウィドウズよりも常に遅かったからね」とワーナー。「マクラーレンのF2は優れたマシンではなかった。ウィドウズはM4Aの弱点を埋め合わせるやり方を見つけたようだが、ローレンスはそうではなかった。そこでフランク・ガードナーと交代させたんだ」

ウィドウズが勝ち取ったフランス南西部ピレネー山脈に程近いポー(Pau)での2位入賞を除けば、マクラーレンのF2プロジェクトは勢いに乗ることができず、その年の9月にはシーズンを終えた。同様にF3へのチャレンジもこの年限りで終了することになった。

「マクラーレンのF3マシンは抜きん出た車ではなかった」とウォーカーは語る。「1968年はテクノ・シャシとファイアストンのタイヤが勝利へのチケットだった。それに比べると我々の車はちょっと重く、十分に仕上がってはいなかったんだ」

その後はご存知のように、マクラーレンはF2にわずかに関わったものの、F3には再び手を伸ばすことはなかった。マクラーレンとて万能ではない。モータースポーツへの情熱はF1に収斂されてこそ、なのである。



マクラーレンの1968年F2での最高位はポーでのロビン・ウィドウズの2位。イアン・アシュレイ(カーナンバー78)と話すのがチームオーナーのグラハム・ワーナー。隣のマイク・ウォーカー(ナンバー77)の車にも.スカレックストリック.のロゴが大書されている


発売中の洋書「チェッカード・ライフ」にはマクラーレンのジュニア・フォーミュラ参戦の経緯が詳しく紹介されている。チェッカード・ライフ ―グラハム・ワーナー伝(A Chequered Life-Graham Warner and The Chequered Flag)著者:Richard Heseltine 出版社:Veloce Publishing

編集翻訳:高平 高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA
Words:Richard Heseltine Photography:James Lipman

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事