最も美しいレーシングカー |マセラティ200SI マセラティ250S

Photography:Martyn Goddard



2台の4気筒マセラティをドライブする
今日は特別な日だ。"2431"がオリジナルエンジンを得て初めて長距離を走り、さらに"2427"というオリジナルのエンジンとランニングギア、そしてボディを保っている数少ない1台と並走するからだ。私が緊張しているのも納得いただけると思う。 GPSによるレストアを終えたそれは、レース準備とメンテナンスを済ませ、ペイント、ボディ、そしてメカニズムの隅々まで染みひとつない状態だったので、濡れた靴で乗り込むのは気が引けた。職人技も息を呑む美しさで、エンジンはまるで彫刻のようだ。

ソラーニャの南の道路は濡れていたが、走るのには問題なく、安心させられた。200SIでの最初の数マイルは新たな発見だった。運転は容易で、楽しく、ドライバーに直ぐに自信を抱かせてくれた。5速のギアボックスは魔法に掛かっているかのように扱いやすく、ペダルも気持ちのよい位置にある。エンジンはわずか2000rmpからモリモリとパワーを発揮しはじめ、回転が上昇するにつれ、パワーはさらに増し、排気とキャブレターの吸気音にカムシャフトのドライブギアのノイズが加わり、ドライバーをゾクゾクとさせる。

特にフェラーリ500と比べると、200SIが「make a bad driver lookcool」というコメントには頷ける(この私もその下手な部類に該当するだろうが)。気性の荒々しさもなく、公道上でレーシングカーを運転しているという感覚や、場違いな環境で走らせるという"罪悪感"を抱くこともない。もちろんレーストラック上でも同様であった。

皮肉にも、現役当時では、限界まで引っ張ると繊細で御しにくい性格とされていたが、近代的なシャシーセットアップとタイヤコンパウンドによってそれらは解消されており、今はユーザーフレンドリーとなり、心地よい。

一方の250Sは、低い回転域での性能はそれほど高いわけではなく、200SIでは45mm径だったウェバーも50mmと口径が大きくなり、たまに踏み込む必要があった。ただ、3速に入れるとプラス500ccのパワーが発揮される。また、2台とも"レーシングカーらしからぬ"ことも印象的で、気軽なドライブも楽しめそうに感じられた。当時のデザインや施工も匠の技の結晶で、見ていても美しい。

一時はフェラーリの存在が4シリンダー・マセラティのうえに影を落としていたが、現在ではそのような陰はなく、むしろ強い光がトライデントの上に注がれている。ますます楽しいドライブが楽しめそうだ。


1957マセラティ200SI(シャシーナンバー:2427)
エンジン:1994cc、4気筒、DOHC、ウェバー45 DCO3サイドドラウト・キャブレター×2基
最高出力:175bhp/6850rpm (GPSテストベンチ実測値)
変速機:5速マニュアル+後退、後輪駆動 ステアリング:ウォーム・アンド・セクター
サスペンション(前):ダブル・ウィッシュボーン、コイルスプリング、ウダイユ・オイルダンパー
サスペンション(後):ド・ディオン・アクスル、横置きリーフスプリング、ウダイユ・オイルダンパー
ブレーキ:4輪ドラム 重量:約658kg

性能(最高速度):約250km/h(5速)



1957年マセラティ250S(シャシーナンバー:2431)
エンジン:2489cc、4気筒、DOHC、ウェバー50 DCO3サイドドラウト・キャブレター×2基 
最高出力:235bhp/7000rpm(GPSテストベンチ実測値)
変速機:5速マニュアル+後退、後輪駆動 ステアリング:ウォーム・アンド・セクター
サスペンション(前):ダブル・ウィッシュボーン、コイルスプリング、ウダイユ・オイルダンパー
サスペンション(後):ド・ディオン・アクスル、横置キリーフ・スプリング、ウダイユ・オイルダンパー
ブレーキ:4輪ドラム重量:約660kg
性能(最高速度):最高ギアで約260km/h(5速)


謝辞:オーナーのウルフ・ヅヴァイフェルとダリウス・アラビアン、GPSクラシック社

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:数賀山 まり Translation: Mari SUGAYAMA Words:Dale Drinnon

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事