美しく蘇ったフェラーリ 375 PLUSの栄光と没落の歴史

フェラーリ375PLUS



スワーテルとランクスワートは、車をモデナへ送り、きれいにレストアを施した。腐食していたオリジナルボディのパネルは丁寧に取り外され、保管された。シャシーの錆びた部分も交換し、取り除かれたパーツはやはり保管された。Bachelli & Villaはボディを作り直し、新たなV12エンジンを正しいスペックで組み立て、取り付けた。1992年、スワーテルはその車をブリュッセルとスペインで公開した。そしてこの年、カール・クレーフェと和解に至った。フィリップ・ランクスワートは、この眩いばかりにレストアされた「フォーナイン」を、2000年代まで数々のヒストリックイベントで駆った。そして車はマラネロのフェラーリミュージアムに展示された。2003年12月24日、カール・クレーフェが 90才でこの世を去った後、

「0384AM」から取り外され長い間眠っていた部品は、クレーフェの娘、クリスティン・クレーフェ・ローソンに相続された。そして残念なことに、レストアした車にその部品を戻したいと切に願ったジャック・スワーテルと彼女の間で対立が起きてしまった。一方、スワーテルはフレッド・レイドルフからオリジナルエンジンを買い戻すことに成功し、そのエンジンは今日も車に収まっている。

ジャック・スワーテルとクリスティン・クレーフェ、そしてクリスティンの顧問との間の関係は長い間行ったり来たりを繰り返し、2010年に法的な争いへと発展した。フェラーリでも著名なジャック・スワーテルは、その年の12月にこの世を去り、そして「0384AM」はその娘であるフローレンスに相続されることとなった。フローレンスは、国際的オークションハウスであるボナムスを呼んだ。そしてこの訴訟が解決した際には、相互利益のためにオークションで車を売却することとし、ベルギーとアメリカとの間で起きている紛争の仲介をしてくれるよう支援を求めた。そしてスペシャリスト、フィリップ・カントールと弁護士のアンソニー・マクリーン率いるボナムスのチームは両者を合意へと導いた。そして今、全ての法的措置は解決し、ゴンザレスがシルバーストーンで優勝を果たし、マリオーリがミッレ・ミリアとル・マンでハンドルを握ったこの見事なフェラーリは、2014年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのボナムス・オークションに出品されることとなった。かつてクレーフェが取り外した全てのオリジナルコンポーネント、1954年当時のボディパネル、そしてエンジンカバー、トランクの蓋、スペアブレーキドラム、オリジナルのボラーニワイヤーホイールの数々、錆びたシャシーの配管、後に交換されたV12エンジン、製造時に使用された数々の鋳型までもが共に出品される。

当時世界選手権で最もパワフルで速いファクトリーチームカーであったこのフェラーリ375プラスは、ル・マン24時間レースでの勝利のみならず、カレラ・パナメリカーナ・メヒコでの記録的な速度をもって、その速さとスタミナ、そして素晴らしい操作性を証明した。洗練された「ミスター・クール」のウンベルト・マリオーリとパオロ・マルゾット。シルバーストーンで飛ぶようにこの375プラスを駆り、勝利を得た、丸々として小柄な「パンパスブル」、豪快で「スピード狂」ヒーローだったフロイラン・ゴンザレス。

かつてカリスマと言われたトップドライバーたちがハンドルを握った、クラシカルなフロントエンジンのフェラーリがついに姿を現わす。驚くべき、そして時にミステリアスなストーリーの数々、今は解かれた複雑な人間関係を秘めて。


1954 フェラーリ375プラススパイダーコルサ
エンジン:4954cc V12 SOHC ウェーバー 46 DCF3 ダウンドラフトキャブレター
最高出力:347bhp / 6800rpm 最大トルク: 48.1kgm / 5000rpm
トランスミッション:4速MTトランスアクスル
サスペンション: 前-ダブルウィッシュボーン、後-横置きド・ディオン式、トランスバースリーフスプリング
ブレーキ:ドラム式  車両重量:957.5kg  最高速度: 299km/h0-60mp加速:4.0秒  
0-100mph加速:11.5秒 0-120mph加速:18.0秒

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編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE
原文翻訳:渡辺 千香子(CK Transcreations Ltd.) Translation: Chikako WATANABE (CK Transcreations Ltd.)
Words: Doug Nye Photography: Simon Clay

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