プリウスのように、プレジャーボートにもハイブリッドの技術を│トヨタマリンの挑戦

トヨタが開発したパラレル式プラグインハイブリッドシステムを搭載したプレジャーボートに試乗する機会を得た。この艇は2018年7月から2021年3月にかけて東京都港湾局に無償貸与され実証実験を行っている。トヨタは自動車領域におけるハイブリッド技術において定評があり、今回は船舶領域における将来のEV化やFC化も視野に電動化技術の展開を図っていくものだ。

ベース艇と同じヘルムステーションデザイン。通常は10.4インチモニターの魚群探知機を装備するが、HVでは大型モニターでナビを含めすべての作動状態も確認できるようになっている。インテリアはホワイト基調にブルーをアクセントにした未来的なものに。

モーターとエンジンの回転数は完全にシンクロしている。エンジン不作動時は液晶はスモークが掛かる。

ドライブモードは3パターンから選べる。正にプリウス感覚だ。

ベース艇はPONAM28が採用されている。日野自動車の商用車用HVモーターを活用しているが、操舵は実にプリウスライクであり、通常のエンジン艇と変わらないものだ。ちなみにパワートレインはエンジンが2982ccディーゼルの191Kw(260ps)/3,600rpm。油圧クラッチ付のモーター・ジェネレーターは最高出力36Kw。リチウムイオンバッテリーのスペックは電圧304V、容量40Ah、総電力12kWhとなっている。

エンジンを前方に30㎝移すことで、その後方にモーター同軸で搭載することができた。

さて操船のドライブモードはEV、ハイブリッド、エンジンの3パターン。EVモードでは巡航速度5ktで50分の航行が可能。ハイブリッドモードでの最高速度は26kt、またエンジンモードでの最高速度は28ktとなり、燃費はそれぞれ51ℓ/h、52ℓ/hとなっている。つまりボートにおけるハイブリッド化は自動車の制動装置のような回生システムが効かないため燃費向上への貢献が今のところ高くはない。ただしハイブリッドモードではを超えたところからエンジンが作動。モーターのアシストによりエンジン飲みに比べて加速感はかなり改善されている。ハイブリッドはゼロエミッションと静粛性こそが一番の狙いであり、それは正にオリンピック。パラリンピック競技大会会場で国内外の賓客や関係者の視察時にはもってこいである。


充電に関しては200Vの陸電からのプラグインとなる。汎用性の向上と充電コスト低減を図っている。

今回の試乗は東京都の夢の島マリーナから行ったが、マリーナへの入港時の行き交い船を待つ間、ヴァーチャルアンカーモードを試す機会があった。これはGPSで停船した位置情報を測位し、その位置に留まる仕組み。艇前方部の左右移動のスラスターと前後移動のスクリューを制御しながら自在に同じ場所に留まるのだが、すべてがモーターで行われるため、作動音がとても静かで驚いた。

の東京都旗が誇らしげに掲げられたリアデッキ。HYBRID艇の開発はこの艇がスタートとなる。


ハイブリッド化による重量増は約800㎏。走りはやや緩慢だが、その分乗り心地はとても良かった。まだ市販までには改善の余地があるが、新しいプレジャーボートに在り方として、このハイブリッドには大きな夢を感じることができた。

トヨタマリン
https://www.toyota.co.jp/marine/

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RANKING人気の記事