サーキットでタイヤスモークの咆哮を上げるミニ・クーパー"クーパーワークスカー"

Photography: Lyndon McNeil、BMW Archives



サーキットテスト_狂気のエンジン
CCKのショーン・レインフォードがグラフィックをテストラップに持ち出した時は、Aシリーズユニットがまきちらす騒音で歴史のかおりはかき消された。車はミスファイアでピットに戻り、コースのどこかにSUH4キャブレターの欠片が転がっているだろうということだった。「昨日はシャシーダイナモ上でかなり快調に走っていたんだが」とショーンはいう。

すぐに修理され、次は私の番となった。信じ難いことにオーナーのベンが私に先にドライブすることを提案してくれたからだ。重要なレーシングミニを壊してしまったら取り返しがつかないと辞退したい気持ちになったが、真摯に対応しないことはかえって失礼だと考えを改め、コクピットに収まった。現在の状態で1293ccから約100bhpを発生する"GPH1C"は、サスペンションはスタンダードのラバーコーンをコニのダンパーで強化し、エイヴォンCR65履く。当時のダンロップ・レーシングのレプリカというべきタイヤだが、コンパウンドは少し安定感を増している。私はすでに数多くのホットなミニを経験してきてはいるものの、こいつはまったく別の新しい感覚だった。速度はそれほどでもないが、それでも私でさえ裏のラヴァントストレートで、トップギアで容易に6300rpmに達した、狂気のエンジンだ。しかも驚くことに極めてトルキーなのだ。

ストレートカットギアの咆哮。最初のマドギックコーナーでは突っ込みそうになり、早々と運転交代を意識した。軽くブレーキをタップして車に合図を与え、フルスロットルをくれる前に落ち着きのないテールのことをちょっと考え、そしてカウンターステアに移行する。前輪のスモーク。しかし私はジョン・ローズではない。彼がどうやって彼の仕事をこなしていたかは簡単に判った。しかし私は気まぐれなリアエンドを感じ取り、同時にフロントホイールがほんの一瞬で滑り出すこと、彼ら流にテールに負荷をかけてのターンが超クイックなことに早くも気付いた。パワースライドを維持することに集中しながら次にはもしアンダーステアが過ぎたら…、と訝しむ。そこで減速しようものなら即スピンに至る。これは"ナイフの刃に乗るような"感触だが、実際はそうでもない。なぜなら車はドライバーシートの真後ろを軸にドライバーのアクセルレーションに従って片足旋回しているようなものだからだ。

私がコツを掴み、この小さくかわいい車を信頼できるようになるまで、たいした時間はかからなかった。その後はかなり楽しくじゃれまわることができたが、私のファイナルラップ終了後でさえ、ひょっとしたら私が壊したかもしれない、そして横転さえしたかもしれないことは常に忘れなかった。だからこそ、決して中速コーナーもナメなかったしパワーを出しすぎることも控えたのだ。長い高速コーナーでは継続的なスライドのほうがよかったかも知れないが、そのために運転席で継続的に不安定な状態を維持し続けることはけっこうキツイ作業だ。

スムーズなスタビリティはレーシングミニらしくない。ミニがドライバーをだまそうとしていないのなら、各コーナーでの操作は通常のマシンで行うときより遅らせるほうが良い結果につながる。走っている間中ステアリングはずっと振動しっぱなし、スロットルペダルは私には高過ぎで、そして2つの左コーナーではシートからすべり落ち続けたけれど、でもそんなことは微塵も気にならない。これはすばらしく楽しい瞬間で、永遠に続いて欲しいとさえ思えるものだったが、しかしベンのために終わらなくてはならない。

「まだこのミニをちゃんと運転したことはないんだ」と彼は言った。ふむ、こいつはなかなか良いスタートだ。エンジョイドライヴィング!


盛大にフロントタイヤからスモークを発しながらコーナリングするレーシングミニ。1960年代中頃、ミニはこのコーナリング姿勢でサーキットを席巻した。(photo:BMW Archives)

1964/65年 ミニ・クーパー"クーパーワークスカー"
エンジン:1293cc 4気筒OHV、SU H4キャブレター×2基 
最大出力:100bhp/6500rpm(推定) トルク:95lb-ft(13.1kgm)/4800rpm(推定)

変速機:前進4段MT、前輪駆動 ステアリング:ラック・ピニオン
サスペンション(前):パラレルリンク、マクファーソンストラット/ラバーコーンスプリング 
サスペンション(後):トレーリングアーム/ラバーコーンスプリング

ブレーキ:(前)ディスク/(後)ドラム 重量:600kg(推定) 
性能・最高速度:107mph(約172km/h)  0-60mph:7.5秒(推定最終減速比3.9:1)


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編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation: Kosaku KOISHIHARA
Words: John Simister Photography: Lyndon McNeil、BMW Archives

取材協力:CCKヒストリック www.cckhistric.com
オーナー:ベン・ガリヴァー グッドウッド・モーターサーキット

編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation: Kosaku KOISHIHARA Words: John Simister 

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