美しい流線型の"ラウンドドア"ロールス・ロイス|巨大ボディに塗り重ねてきた驚きの過去とは

Photography: Scott Williamson



1964年春にCCCAの機関誌『クラシックカー』は、マックスとセシル・オビーが再び国中を巡るツアーを行い、ラウンドドア・ロールスを「あちこちの市や町で何千人もが目にした」と伝えている。オビーは、ショーマンとして旅巡業する傍ら、ウェスタン・エレクトリック社でエンジニアもしていたが、その頃には引退してフロリダに移住。1990年にマイアミ心臓研究所で長い闘病の末72歳で亡くなった。妻のセシルはその8年後に亡くなっている。ラウンドドア・ロールスは長年保管されていたが、白色に塗装され、1980年代にオークションで売却された。走行距離はわずか5000マイルで、日本のコレクターが150万ドルで購入。その後20年間所有し、時折ガレージを改装した展示場などで公開していた。そして2001年に、現オーナーであるロサンゼルスのピーターセン自動車博物館がヨンケーレ・ロールスを手に入れ、レストアのため、ペブルビーチで優勝経験もあるモンロビアのタイアド・アイアン・ワークスに送った。徹底的なレストアの過程で、もともと長かったファントムのシャシーを、新たなボディを架装するためヨンケーレがさらに延長していたことが判明した。未来的なシルエットを生かすため黒に塗り直されたラウンドドア・ロールスは、2005年にペブルビーチ・コンクール・デレガンスに登場すると、ルーシャス・ビーブ・トロフィーを獲得。これは、「初期の審査員であり美食家だったルーシャス・ビーブの伝統を最も受け継ぐと認められた」ロールス・ロイスに贈られる賞である。

大胆不敵なビーブ氏は、個人専用の鉄道車両も所有していた作家で、こんな話をしたことでも有名だ。「やる価値のあることなら、スタイリッシュにやるべきだ。それも自分自身のスタイルであって、ほかの誰の真似でもない!」このユニークなロールスに、正にぴったりの賞ではないか。さらに2012年9月、このラウンドドアは初開催のウィンザー城コンクール・デレガンスで「貴族の巨大な車クラス」に出場した。デューゼンバーグすら小さく見せてしまう車はなかなかない。まさに壮観であったことだろう。

ラウンドドア・ロールスは、ピーターセン自動車博物館にたびたび展示されている。www.petersen.org



複雑な仕組みのトランクを開けると、作り付けのケースが隠されている


車内はこぢんまりしている


信じられないことに1950年代初頭には既にニュージャージーの廃品置き場に放置されていた


1925/1936年 "ラウンドドア"ロールス・ロイス・ファントム by ヨンケーレ
エンジン:7668cc、直列6気筒、OHV、ロールス・ロイス製キャブレター×1基
パワー:「必要にして十分」 変速機:前進4段MT、後輪駆動
ステアリング:ウォーム・ナット
サスペンション(前):ビームアクスル、半楕円リーフスプリング、フリクションダンパー

サスペンション(後):リジッドアクスル、カンチレバー式リーフスプリング、フリクションダンパー
ブレーキ:ドラム 車重:3266kg 最高速度:193km/h(公称値)


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編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITAWords: David Burgess-Wise

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