フェラーリ、カウンタック、アストンマーチン、コルベット…スーパーカーNo.1に選ばれた車種とは?

スーパーカーNo.1は果たして

1980年代半ば、スーパーカーの仲間入りをしようとすれば最低でも400bhp、そして少なくとも8気筒が要求された。もしもこれがV12を積んでいたり、ターボがついたりすれば、紛れもない本物だ。"時間のギャップ"はドラッグレースコースのはるか彼方へと吹き飛ばされていくだろう

当時はまだ、F1マシン以外に最高出力400bhpのクルマを見つけ出すのは難しい時代だった。現在であれば、この程度のパワーは珍しくないし、もっとパワフルなロードカーさえ見つけるのは容易だが、あの頃に比べれば技術が格段に進歩しているのだからそれも当然だろう。いっぽう、1980年代はスーパーカーの円熟期だった。この頃になると、メーカーが気まぐれで最高出力を決める時代は終わりを告げ、最高速度で優劣を決める時代に入っていた。それも、「私たちのモデルは最高速度が200mph(約320㎞/h)です」と口先で主張するだけでは不十分で、しっかりとそれを証明してみせる必要があった。

1980年代には、ホモロゲーション・スペシャルが立て続けに登場し、醜悪なモデルを送り出すチューナーも少なくなかった。そのいっぽうで、少数ながらも本当に素晴らしい名作が誕生したし、人気が出て当然と思えるモデルも少なからずあった。ただし、ここに取り上げる4台は、そのなかでも本物中の本物といえる。ランボルギーニ・カウンタックは1970年代の終わりとともにその終焉を迎えようとしていたが、クワトロヴァルヴォーレの登場によって見事な復活を果たしてみせた。80年代スーパーカーの金字塔というべきフェラーリF40はサーキットにもその足跡を数多く残した。アストンマーティンV8ザガートはビスポークで仕上げられた限定モデルだ。そしてこのなかではジョーカーに近い存在といえるのが、予想を覆すほど素晴らしい仕上がりのシボレー・コルベットZR-1である。

それぞれ出自も異なれば個性もバラバラの4台だが、今日はこの中から1台だけ勝者を選ぶことにしよう。テストの舞台として選んだのは、イギリスのドラッグレースコースとして長い歴史を誇るサンタ・ポッドである。

ランボルギーニ・カウンタックQV500
ランボルギーニ・カウンタック・クワトロヴァルヴォーレを乗りこなしてやろうなどと思わないほうがいい。どんなときも乗せられているのはあなたのほうだ。これは使い古された表現だが、事実だから仕方がない。このモデルこそ、1980年代にスーパーカーに憧れた子供たちにとって最大のヒーローといって間違いないだろう。オトナになっても当時の熱い思いを持ち続けている者は少数派かもしれないが、そのステアリングを握れば抑えきれない感動が込み上げてくるはず。455bhpのパワーは、何かトラブルを起こすには十分なパフォーマンスだといえる。

カウンタックの名は、マルチェロ・ガンディーニが作り上げたフルスケールのモデルを初めてヌッチオ・ベルトーネが目の当たりにしたとき、思わず口を突いて出た驚きの言葉に由来しているという。このモデルが1971年ジュネーブ・ショーで公開されたとき、どんな反応が巻き起こったかを想像してみて欲しい。これこそ、ミウラを発表して以来、鳴かず飛ばずだったランボルギーニとベルトーネが逆転ホームランを放った瞬間であった。したがって、もしもミウラがスーパーカーとしての出発点だったとしたら、それを巡航高度まで引き上げたのがカウンタックだったといえるだろう。

しかし、カウンタックの見どころはスタイリングだけではない。オールアロイで4本のカムを持つV12エンジンは至宝の存在だし、ジオット・ビッザリーニの発案でジャンパオロ・ダラーラが熟成したシャシーは長年にわたりランボルギーニというブランドをリードする役割を果たしてきた。横置きとされたミウラと異なり、エンジンを縦置きにしたそのパッケージングも極めて特徴的だ。ギアボックスをエンジンの前にレイアウトすることでホイールベース内に収めるとともに、その両脇に燃料タンクとラジエターを配置。そして1985年にはそれまで4.8Lだったエンジンを5167ccへと拡大すると同時に、元マセラティのジュリオ・アルフィエリがデザインした新しいシリンダーヘッドを組み合わせたのだ。この結果、クワトロヴァルヴォーレ(QV)は180mph(約288km/h)を上回る最高速度を達成し、当時デビューしたばかりだったフェラーリ・テスタロッサの前に立ちはだかってみせたのである。

いま改めて乗ってもQVは驚きに満ちている。なぜなら、最新モデルとは異質の、一昔前のスーパーカーでなければ味わえない荒々しさに満ちているからだ。これは決して非難ではない。なにしろ、この感覚こそ、まさにカウンタックそのものだといえるからだ。そしてこのクルマを乗りこなしたときには、大いなる満足感を味わうことができる。

もっとも、タウンスピードにおけるカウンタックはひどいものだ。まず、クラッチがあまりに重くて左脚の膝の裏側が痙りそうになる。また、独創的なレイアウトを採用したためにギアボックスがキャビン内に侵入しており、この影響でペダル類のレイアウトはまるで折り重なっているかのようだし、ステアリングは膝とぶつかりそうな位置にある。おかげで、かなり辛い態勢になるのは事実だ。

けれども、カウンタックは意外にも従順で扱いやすい。いざとなれば強烈な加速を示すが、トルク特性は驚くほどリニアなもの。ボトムエンドでもスロットルにしっかり反応するほか、トップエンドでは6基のツインチョーク・ダウンドラフト・ウェバーがゴクゴクと燃料を呑み込む様子がわかって興味深い。100㎞/h台であれば、多少フロントにリフトが起きるものの直進性は良好で、ワンダリングも感じられない。ブレーキは強力でプログレッシブな効きを示し、ステアリングからのインフォメーションは豊富。ギアボックスのフィーリングはやや大味だが、ゲート感は明瞭だ。馴れてくれば素早いシフトが可能になるだろう。

いっぽう、着座位置は極端に低く、視界はごく限られている。バックする際には深呼吸が必要で、あてずっぽうな運転となるのは避けられない。でも、それだけの理由で、このスーパーカー界のマイルストーンを見くびるわけにはいかない。カウンタックが登場したのは、ミウラがデビューしてまだ5年しか経っていなかった頃のこと。当然、スーパーカーというコンセプト自体がまだ新しいものだった。しかも、ランボルギーニの社内ではオーナーシップを巡る騒動が起きていた。この歴史的な名車はそうした時代的背景を背負って誕生したのだ。そして、新設計の48バルブ・ヘッドはこのモデルの大幅な延命に成功した。ひとつだけ残念なのは25thアニバーサリー・モデルだ。あれはまるで、ラスヴェガスのホテルに出演していた晩年のエルヴィス・プレスリー並みに醜悪だった。

「安っぽいのに見栄ばかり張っているカウンタックは、まるでスーパーカー界のピエロだ」そんな陰口を叩く者もいるが、クワトロヴァルヴォーレは本物だ。買って決して損することはないと、私が請け負っておく。


燃料噴射装置ではなくキャブ 


6基のウェバー・キャブ 


スーパーカー史上、おそらくもっとも注目度の高いスタイリング;インテリアのデザインもエッジが効いている


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