フェラーリ、カウンタック、アストンマーチン、コルベット…スーパーカーNo.1に選ばれた車種とは?

スーパーカーNo.1は果たして



アストンマーティンV8ザガート
アストンマーティンV8ザガートは、1960年代初頭に誕生したDB4GTザガートに敬意を表したモデルとされるが、こちらのほうがさらに刺激的だ。このクルマは、レースに参加するために作られたわけでもなければ、派手な装飾が施されているわけでもない。1960年代のエレガントさがシンプルに表現されている傑作だが、ミラノに本拠を置くザガートは、会社にとってドル箱となったかもしれないこのチャンスをみすみすフイにしてしまった。というのも、ごく初期のレンダリングを描いただけで、このプロジェクトを手放してしまったからだ。だからといって、アストンマーティンの歴史に残るこのモデルのことを見くびってもらっては困る。 


1980年代半ばに登場したV8ザガートは、435bhpのエンジンを積み、標準的なV8ヴァンテージよりも車重をおよそ10%軽くするとともに、エアロダイナミクスにも磨きをかけた(CD値はスタンダードの0.38に対して0.33)モデルで、当時は史上もっとも速いアストンマーティンだった。また、フェラーリ288GTOやポルシェ959と互角に渡り合える数少ないモデルでもあった。ノーズを上げ、ややスクワットしながら加速するV8ザガートは、現在の基準に照らし合わせてもすこぶる速いスーパーカーといえるだろう。

1984年3月、当時のアストンの代表だったヴィクター・ガントレットはある思いを胸にジュネーブ・ショーの会場を訪ね、エリオとジャンニのザガート兄弟と会談した。ウェッジシェイプをしたラゴンダはそろそろ廃れ始め、もはや古典と呼んでもおかしくないV8の命脈が尽きかけていることを受け、限定モデルをリリースすることでブランドへの注目度を再び高めようと考えていたのだ。交渉は11月までに実を結び、カスタムボディをまとった50台のアストンを販売することが決定。最初の1台は同社のワークス・サービス部で1985年1月に完成した。その2カ月後、このモデルをジュネーブ・ショーで発表すると、熱病に冒されたかのような大ブームが世界中で起きた。注文するには1万5000ポンド(当時のレートで約450万円)のデポジットが必要だったが、それでも多くのオーダーが集まったのである。

ところが、1986年に生産車が完成したとき、ジュゼッペ・ミッチノが描いたオリジナルのラインはモディファイされ、愛らしさが失われていた。価格も同様で、当初は8万7000ポンド(約2600万円)とされていたものが、最終的には14万5000ポンド(約4400万円)まで跳ね上がった。さらにガントレットは、これに続いてコンバーティブルボディのヴォランテを37台作ったのである。V8ザガートのファンはいまも存在するが、やや下品な出で立ちにより、その価値をあまり認められていないのは残念である。

フロント回りにはアストン伝統のグリルとルノー11から拝借してきたヘッドライトが取り付けられているが、正直、美しいとは言いがたい。また、ザガートの伝統であるバブルルーフも控えめでほとんど目立たない。いっぽうで、ボディの小型化は大きな成果を挙げており、オーバーハングはV8ヴァンテージより実に16インチ(約41㎝)も短くなったほか、前面投影面積は7%小さくされた。さらにウィンドウやドアハンドルはフラッシュサーフェース化されており、空気の流れを妨げない。ちなみに、グラスファイバー製のフロントスポイラーを外すとCD値は0.29まで下がるというが、これを外せば何か失う物があることを忘れてはならない。

当時の資料によれば、5.3LのV8エンジンにより最高速度は186mph(約298km/h)に達し、0-60mph加速は4.8秒で駆け抜けるという。しかし、実際にはそれ以上に速く感じる。最大トルクは395lb-ft(54.6kgm)だが、巨大な物体がこれほどのスピードで移動することには驚くばかりだ。加速中はキャブの咳き込む音や様々なメカニカル・ノイズが耳に届くが、それらさえ荘厳な音色に響く。ZF製の5段マニュアル・ギアボックスを操って走るカントリーロードは快適で、まるでクルマがひとまわり小さくなったように感じるほど。ステアリングの重さは適度で、ロック・トゥ・ロックはわずか2.9回転でしかしない。しかも、ロールも小さいので機敏な走りが可能だ。ただし、1590kgのボディを制動させるベンチレーテッドディスクは、2回目のブレーキングからフィーリングが変化するので注意が必要である。

その作りは決して精妙とはいえないが、それでも実に堂々とした佇まいを見せる。もしもこのデザインが奇異に思えるなら、まずは1980年代のアストンマーティン・ラゴンダを眺めたほうがいい。きっと、V8ザガートの印象が一転することだろう。


ザガートのスタイリングが様々な議論を巻き起こすのは、デビュー当時もいまも変わらない。それに比べると435bhp V8への注目度は低い。


インテリアは驚くほど殺風景


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