フェルッチオ・ランボルギーニが愛したクラシックボート|リーヴァ・アクアラマ

Photography: Maurice Volmeyer and Riva-World



さてフェルッチオのアクアラマをコンクールコンディションへレストアするよう任された男、リーヴァ・ワールドの設立者、サンドロ・ザーニのプレッシャーはいかほどの者なのか。木製のボートを復元するのはとても手のかかる仕事であり、このボートはその中でも特に困難を極めた。「フェルッチオが1968年5月にアクアラマを発注したとき、ナンバー278のこのボートには、標準装備である220馬力のスモールブロックV8エンジンが既に取り付けられていた。」サンドロは言った。「だがフェルッチオは彼のV8より長いそのエンジンを搭載するにはボート全体を大きく改造しなければならない。さらに標準のエキゾーストマニホールドに代えて直線状の銅管を使い、デッキに手すりも付けるよう依頼したのだ。」

アメリカのクルセイダーエンジン社からリーヴァに供給されたGM製スモールブロックV8エンジンに比べて、V12エンジンはかなりの高出力を発揮するため、トランスミッションも通常ビッグブロックV8エンジンに使用されるボルグワーナー製ベルベットドライブ72Cユニットへとアップグレードされた。

「ボートはその年の8月に完成したが、納品されてからすぐに不具合があることがわかった。ひとつは自動車用に作られたエンジンから最高出力と最大トルクを得るためには回転域が高くなりすぎてしまうことだ。チェルヴィアにあるフェルッチオのサマーハウス近くにあるボートヤードへ派遣されたリーヴァのチーフエンジニア、リノ・モロジーニは、ランボルギーニのエンジンを外してリーヴァのエンジンに交換した。その後リーヴァはほとんどこのボートに関わることはなかったから、社内では失敗作という評判が流れたのさ。」

しかしこれがストーリーのすべてではない。まだまだ続きがあったのだ。フェルッチオはランボルギーニのエンジニアにV12エンジンのさらなる改造を命じ、イスレロ350GTと400GTの様々なパーツが使用された。2台のうち1台は、潤滑装置の変更や独自のウォーターポンプの鋳造などにより、既に反回転式へと改造されていた。ポンプでくみ上げられた川、海、湖の水は、エンジンの熱交換器周りへ送られ、オイルとクーラントを冷却し、その後トランスミッションクーラー、二重構造のエキマニを通って、スターンのエキゾーストポートから排出される仕組みだ。

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編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE 原文翻訳:渡辺 千香子(CK Transcreations Ltd.)Translation: Chikako WATANABE (CK Transcreations Ltd.) Words: Mark Dixon 

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