ローリングストーンズのビルが宇宙船のような愛車で過ごした日々の思い出を語る│あの著名人にも会いに



"レコーディングのためにキースの住む遠いところまで行ったりしていたよ。8時間かけてパリを縦断したりね。たくさんの友達やガールフレンド、モデルたちも乗せてきたよ。マルク・シャガールやジェイムズ・ボールドウィンとも友達であったから、会いにいくためにコートダジュールにも行った。リンゴ・スターとモンテ・カルロまで行って遊んだりもしたね。プロテニス選手のビタス・ゲルレイティスに会いにも行っていたよ。いつもテニスを教えようとしてくれるんだけど、ただ馬鹿みたいにボールを追いかけるだけで終わっていたね。そんな私の姿を彼はただ突っ立って見ていたんだ"



ビルはこうしてSMと過ごした日々のことを思い出していた。"スペインまでも行ったんだよ!イタリアのマルセイユやポルトフィーノにも行ってイギリスまで戻る、なんてことも数回していたね。もちろん、スイスにも。モントルー・ジャズフェスティバルで演奏するために2度行ったんだ。1度目はバディ・ガイやジュニア・ウェルズ、ピントップ・パーキンズと一緒に。3年後に、マディ・ウォーターズと一緒に3回演奏したよ。"

"とっても運転しやすかったんだ"と、SMの話しに戻るビル。当時のSMはその独特なデザイン批評されていたりもした。ディーラーのサポートでの不満や、車自体にトラブルは無かったのかと聞いてみると、"1度しか無い"と言うのだ。"深夜2時くらいにモンテ・カルロから戻っていた時、動かなくなってしまったんだ。電話を探して、タクシーも探したんだけど、何一つ見つからなくて。暗い雨の中、歩いて帰ることにしたんだ。4時間かかったよ!早朝に庭師の家のドアをたたいて、暖をとらせてもらった。身体は完全に凍っていたね"

"車のことが本当に心配だったんだけど、とにかくヒューズが飛んじゃってたんだ。でも、トラブルはこれだけだよ。夢のようだよね。私は基本的に80km/hで走っていたくらいの安全運転主義なんだけど一度だけ125kmを出したことがあった。これがこのSMだとすごく安定するんだよ!メルセデスのサルーンでスピードを出すと浮いているようで怖かったのに"

メルセデスといえば、ビルは1966年に購入した250SELなども長年所有している。"はじめてのメルセデスはブラックアウトウィンドウの1台だった。ミックもブライアンもみんな持っているミニをブラックウィンドウにしていたんだよ。でも、メルセデスにブラックウィンドウが無くて、自分でどうすればブラックウィンドウにできるのか調べたんだ。そしたら、当たり前だけど道ではいつも警察に止められたよ"



おもしろいことに、オクタン読者がビルの話に関して付け加えたいことがあるというのだ。
"1965年、私は車のセールスマンをしていたのですが、現地のドライビングインストラクターがある生徒について話してきたんです。その生徒は運転免許を取得してばかりで、新しいメルセデスが欲しいと言っていたそうです。それも、ブラックウィンドウで、ラジオとレコードプレイヤー付きの250SELを。車が納品されるまでどれくらいかかるかと本人に聞かれたので、6週間くらいと伝えたのですが、それまで待てないと言うのです。そしたら今度は、何の車なら在庫にあるんだ?と言うので、新車のMGBがあると伝えました。同時に、その車は売れました。更には、その車では息子を乗せられないからモーリス 1000 トラベラーのような車が良いと彼の妻が言うのです。そしたら彼は、オーケー。3台買うよ。と言って小切手を持ってきたんです。なぜ私と同じ年齢くらいの若者がこんな贅沢をできるのかと不思議でしたよ。そして彼は私に言ったのです。僕が誰だか分かるだろう?もしかして分かっていない?ローリングストーンズだよ と"そして彼は続けた。

"メルセデスはブラックウィンドウを製作してくれなかったんです。でも、ビートルズのロールスがブラックウィンドウだったことを見つけて、どうやって手に入れたのか調べました。西ロンドンの会社が特別に製作してくれました。ビルのもとに透明のウィンドウの250SELが届けられ、約1か月後に私が引き取りブラックウィンドウにしてからまたビルのもとに届けました。一生忘れない出来事です"

1980年にビルはフランスを去り、シトロエンSMと共にイギリスに戻ったのだが、駐車できる場所が限られていることと左ハンドルであることがあり、乗ることは無くなった。そして、サッフォークの家にしまい込まれたのだ。250SELは売却したのだが、最近になってまだサッフォークにあることを知り、買い戻したのだそうだ。
"そのオーナーは3000ポンドで売りたいと言っていたのだけれど、現金で1000ポンドを持っていったら売ってくれたよ。そして、クラシックカースペシャリスト トニーのもとにレストアに出したんだ。トニーはベアメタルを取り戻し、ガラスを取り換えるためだけに別の車を購入した。(ブラックウィンドウでは、ビルが外を見れなくて元に戻したそうだ。)



トニーは現在、SMの整備もおこなっている。ビルはSMのドアを開け、乗り込み何か考え込んでいるようだった。この車と過ごした日々のことを思い返しているのだろうか。彼はその思いドアを閉めた。冷たい風を遮るためか、楽しかった記憶を閉じ込めておくためか。フランスのナンバーが付いたままだ。ビルは何も言わずに、マセラティV6エンジンをかけた。そのパワーは変わっていないかと聞くと、"全く変わっていない"と笑顔で答えた。ちょっとそこまで走ってみては?と言うと、ビルは答えた。"ダメだよ。この車は道路税払ってないからね"





Words: David Lillywhite
Photography: Matthew Howell

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