旧車の梁山泊。イギリス王立空軍基地跡に出現したクラシックカー・バイク職人達の村

Photography:Matt Howell

古い車やバイク、そして飛行機をレストアするスペシャリスト達が、一旦は放棄され忘れられていた、かつてのRAF爆撃機基地に集まって拠点を構えているというそれを聞いてOctane編集スタッフが放っておけるはずがない

夢の実現
その存在自体が未だに信じられない。

かつてのRAF、王立空軍基地跡地に出現した「古い車、バイクそして飛行機のスペシャリスト、職人達の"村"」。ロンドンからは車や鉄道で1時間ほど。5つのインターナショナルエアポートからは1時間半。そしてシルバーストン・サーキットとそれを取り巻く"モータースポーツの谷"からはほんの30分足らずという絶好のロケーションにある。我々はここまで期待と不安を胸に、何度も眉に唾しながら開発をその間近で見守ってきた。夢は本当に実現するのか?計画通りに素晴らしいものになるのか?

そしてその一年後、夢より遥かに素晴らしく完成したビスター・ヘリテージへの訪問は、実際鳥肌が立つほどの感動だった。

忘れられた空軍基地
そこは、かつてのRAFビスター空軍基地。交通に関する歴史遺産を紹介するウェブサイト「OurTransport Heritage」では、「手つかずに残っている最も素晴らしい戦前の空軍基地のひとつ」と紹介されている。この基地から最初の飛行機が離陸したのは1911年8月19日。1916年には軍用エアフィールドに転用され、1920年代に爆撃機基地となり、30年代に拡張。1945年の終戦時に整備基地となる。そして1970年代までには徐々に縮小され、米空軍が一時的に事務棟として使用。1991年にハンガーのひとつを緊急医療施設としたりしたものの、それからは忘れられた存在となっていた。

ここが宅地業者の魔手から逃れられたのは小さな奇跡である。実際、1990年代には危機が近づいていたが、地元住民の反対により地方議会はここを保全地区と定めたのだ。最終的に2009年の売り立てでは10人以上が競りに参加した。売り主の国防省は用地が保全されることを希望し、ビスター・ヘリテージは彼らの計画の正当性を説明する入札書類の準備に1000時間以上を費やさなければならなかった。そして入札は成功し、 348エーカー(約42万7000坪)の用地は340万ポンド(約4億4200万円)で落札された。金額自体を聞くとそれほど高くはない買い物に思えるが、実際には敷地内の50余りの建物のうちの19棟はグレード2の歴史的建造物(Listedbuilding)に指定されている。

グレード2とは、「特に重要な建造物」のことであり、ほとんど放棄された状態であったにもかかわらず、英国の歴史的建造物を保全する目的で設立された英政府組織のイングリッシュヘリテージが、工場やショールームおよびオフィスへの転換を承認するという保証はなかった。また、その時点では入居希望者があるのかもわからなかった。ビスター・ヘリテージとしては完成度を高めるために、更に数百万ポンドの投資を用意する必要があった。

さてゲートを通り抜けると、まだ手を付けられていないままの消防オフィスが右手に見える。左側には素晴らしい状態に復元された旧衛兵詰め所。ここは現在ビスター・ヘリテージの本部となっていて、我々はそこでダイレクターのダン・ゲーヘーガン氏、アシスタントのティギー・アトキンソン氏と会った。元シルバーストン・サーキットのマネージャーで、ドニントンパークのマネージングダイレクターを務めるブライアン・パレット氏が運営する不動産オフィスや、ドニントン・ヒストリックフェスティバルのオーガナイザー事務所もここにある。

ゲート前方には3本の並木道がある。スクランブル発進の際、地上整備員を滑走路と搭乗ゲートへ直接向かわせることができる。また他のサポートも可能なように考案された旧RAFエアベース特有の「トライデント」型の通路へ向かうことも可能だ。そして衛兵詰め所のポーチには、かつてスクランブル発信を知らせているベルがぶら下っている。



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編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation: Kosaku KOISHIHARA Words:David Lillywhite

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