旧車の梁山泊。イギリス王立空軍基地跡に出現したクラシックカー・バイク職人達の村

Photography:Matt Howell


場内探検
今日の案内役はダイレクターのダン・ゲーヘーガン氏が買って出てくれた。我々はまず左の枝道を目指した。ここは最初に復元して使用する予定の10棟の建物があるエリアで、既に完成した消防署がある。

発電施設は、VSCC(ヴィンティッジ・スポーツカー・クラブ)を通じてダンと知り合ったボナムスの元従業員ロバート・グラバー氏が、状態のよい戦前車だけを扱う新しいディーラーを立ち上げた場所であり、すでに仕上げ段階に入っている。建屋内には既にベントレーとブガッティが置かれていた。

この建物の復元は見事だった。屋根と鉄の雨樋類は交換され、オリジナルの窓枠はクリットオールウインドウズ社が生産を続けている複製品を使って仕上げられていた。屋内の部分タイル張りの床は完璧というにはほど遠いコンディションだが、しかしこれはオリジナルであり、このままイジらずに保存することが重要である。ただ、その上方にぶら下がっている働く彫刻、完璧にレストアされたハーバートモーリス社の6トンクレーンほど重要ではないかも知れないが。隣はフル装備のアパートとして改築された建物で、ビスター・ヘリテージ訪問者の誰でもが利用する事ができる。

次に、この敷地内で坪単価が最も高価だという建物が紹介された。看板には「技術的仮設便所」とあり、ナンバー"100"または"loo(便所)"となっている(王立空軍はユーモアのセンスがないなどと言ったのはだれだ)。

ここの便器とシンクはすべて時代考証的に正しいものが使われているが、オリジナルのものより快適になっているのは確かだ。しかしダンが本当に興奮しているのは色のコンビネーションであった。使われているのはすべて当時の国防省が制定した色であり、彼は、その場ではノートが追いつかないほどの早さで色の名前をいろいろ並べ、「我々の会長はサイト全域の色を正確に調査するために200時間以上を費やしたんだ」と説明してくれた。

トイレの後ろ側は頑丈な爆発物処理用の壁で、ここには以前発電施設があったらしい。分厚い鋼鉄で武装したドアを、我々が入り込めるだけむりやり押し開けたが、我々が最初の訪問者ではなかったらしい。壁面は大量の落書きで装飾されていた。壁面の裾は、内部の壁に沿ってエレガントなカーブを描く、しかもいまだ驚くほどの光沢を保っているタイルだ。これらの建物は驚くほどコストを掛けて作られているように見える。しかし考えてみれば基地の.住人.であった当時の主力爆撃機、アブロ・ランカスターの価格は3万5000ポンド。それは農場約70カ所分の価格なのだから、そもそも建設費のコストカットはあまり積極的でなかったのだろう。

4気筒ヴィンテッジ・ベントレーのスペシャリスト、イーウェン・ゲットリー氏は、彼のエンジンテストハウスの最後の仕上げとして、新しいコーヒーマシンを楽しそうにセットしながら、オリジナルの分厚いコンクリート製のワークベンチに腰を掛けた。ここには幸運にも何十年かを生き残った素晴らしい工作機械が溢れている。

我々は次に中央の枝道へと向かった。私は、敷地全体では300本以上といわれるニレやブナの林の中を当時の爆撃機搭乗員達が歩いている姿を目に浮かべた。だがよく考えてみれば、当時はまだ細い幼木だったはずだ。今は見事に茂っているが、それでも敷地の中央に格納庫が2棟見える。この2棟の間に、かつてはエアフィールドが望めたはずだが、今は燃料給油車置き場が中央枝道の端に建てられ視界を遮ってしまった。

かつては兵器庫やレクチャールームだったこともある、大きなオフィスビルはどうなるのかを尋ねてみた。ダンは「ここはクラブの中枢、カークラブのサーヴィスオフィス、交換台、会議室、それにルーフテラスにするつもりだ…」と説明してくれた。この.クラブハウス.計画のために、さらに魅力的なコートヤード(中庭)が既に作られている。また他のユニットのレセプションスペースには、数カ月前に写真家マット・ハウエル氏によって撮影されたブガッティ・タイプ51の写真が飾られている。マットはその時のことを思い出し、サイト全体の変容が信じられないと言った。

もし計画が順調に進むなら、ここはクラシックカー芸術家たちの梁山泊となるだろう。電気屋、内装職人、板金工たちを棟から棟へ尋ね歩く楽しさを思ってみてほしい。隣接したスペシャルリペアの作業場を縫って進み、右手の枝道へ向かった。この辺りの建物はまだ手つかずだが、1980年代に放火犯の標的となった古い整備作業ビルを除いては、想像していたよりもコンディションは悪くない。火災のダメージはあまり大きくなかったようだ。



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編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation: Kosaku KOISHIHARA Words:David Lillywhite

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