航空機用エンジンを積み1000馬力で走るモンスターの正体とは

ジョン・ドッド製作1981年"ビースト"



マーリンとミーティア
スピットファイアや戦車に搭載され、大成功を収めたパワフルなV12エンジン

ウェットライナー、4バルブ、ツインプラグ、スーパーチャージャーを搭載した"ロールス・ロイス・ロイス・マーリン"は1933年に考案され、2013年10月に80周年を迎えた。初めて就航したマーリン搭載の航空機はフェアリー・バトルだったが、その後ホーカー・ハリケーン、スーパーマリン・スピットファイアー、デ・ハビランド モスキート、アブロランカスターに搭載され、その名を知らしめた。アメリカのノースアメリカン・マスタングは、当初、アリソン製エンジンを搭載していたが、ロールス・ロイスのマーリンを採用することによって初めて真の成功を手にした。


シングル・オーバーヘッド・カムシャフトで、1気筒あたり4個のバルブをフィンガーロッカーアームを介して作動させる。遠心式スーパーチャージャー(後のエンジンは二段二速)はエンジン後方から駆動され、アップドラフト型キャブレターを介して吸気する。プロペラはクランクシャフトから遊星ギアトレーンを介して駆動している。

第二次世界大戦初期には、約1000bhpであったマーリンは、改良が重ねられた結果、約1650bhpまで向上している。後の仕様ではブースト圧を36psiに高め、150オクタン燃料で、2600bhpを達成した。

ロールス・ロイスのダービー、クルー、グラスゴーの各工場で製造されたマーリンに加え、3万400基が英国フォードのトラフォードパーク工場で製造された(フォードはRRの図面に指示された公差が広すぎたので、2万枚の図面をリライトしたと主張している)。このほか米国のパッカードでも製造された。

自然吸気600bhp仕様であるミーティアは、マーリン3をベースにして戦車用として開発したもので、ミーティアはマーリンよりもアルミの量を減らしスチールを多用して造られた。時に中古のマーリン・シリンダーブロックを使用して作られたこともあった。1942年からはローバー社が生産した。

マーリンは約15万基が製造された後、1950年に生産を終了した。スピットファイア・スペアーズのグラハム・アドラムによれば、使用可能なマーリンの現在の相場は約2万5000ポンド、戦車用のミーティアなら約1万ポンドとのこと。(訳註:このビーストに搭載されたのは、1950年に英空軍・海軍のために少数が生産された練習機、ボールトンポール・バリオールT2に搭載されたマーリン・エンジン)


ジョン・ドッド製作1981年"ビースト"
エンジン:27000cc、V型12気筒、SOHC、4バルブホーリー製4バレルキャブレター
最高出力:1000bhp/2700rpm(公表値)  
最大トルク:"手に負えない程の大きさ"(スピットファイア・スペアーズのG.アドラム談)

変速機:GM製"ターボ400"3速AT、一次減速(3.5:1)、後輪駆動
ステアリング:ウォーム・ローラー式(オースティン・ウェストミンスター用)
サスペンション(前):ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、ツインテレスコピックダンパー、スタビライザー
サスペンション(後):ロアーウィッシュボーン、固定長ドライブシャフト、ラジアスアーム、
ペアコイルスプリング、テレスコピックダンパー 
ブレーキ:4輪ベンチレーテッドディスク
車重:約2250kg 最高速度(公称値):260mph(418km/h)


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編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:渡辺 千香子(CK Transcreations Ltd.) Translation:Chikako WATANABE (CK Transcreations Ltd.)  Words:Paul Hardiman Photography:Paul Harmer

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