言い尽くせない魅力がそこにある。|フェラーリ275GTBコンペティツィオーネ

疾走する275GTB/C。Cはコンペティツィオーネの意味。美しいサイドビューにスクーデリア・フィリピネッティの文字が映える広いキャビンは仕立ても素晴らしい。細いAピラーと広いグラスエリアのおかげで視界も良好だ



ラグナセカに着くまでの公道でふたつの長所を我々は実感した。それはサスペンションのしなやかさと混んだ交通のなかでも扱いやすいエンジンの素性の良さである。ただ、唐突に繋がるレーシングクラッチだけは停止状態からスムーズに発進させるのが難しく、ちょっとばかり閉口した。乗り心地はレースカーとしては大変素晴らしく、誰でもリラックスした雰囲気でツーリングすることができる。ただしスロットルを無造作に踏まなければ!グンッとくるその衝撃は本当にワオと声を発してしまうほどだが、そのときからキャビンは12気筒が発する狂気の歌声で圧倒されるから、その声は誰にも聞こえない。

ステアリングはどの速度域でも適度な重さを保つものの、60mph(約96km/h)以上になると細かい振動が出る。ブレーキがいきなり効くタイプであるのはレースカーならば驚かないが、その踏み込み量は2、3インチ(10cmほど)と深めなため、ヒール&トゥはやりにくい。だから一般道などでギアを巧みに操りながら飛ばしたければ、他車への追突を避けるために常にブレーキペダルに足を乗せておく必要がある。

このGTB/Cは他の275よりどれだけ魅力的だったのだろうか。現時点での私の中でのベストは依然、軽量な4カムの275である。この車が素晴らしい運動性能を持ち、見事な整備がされていたことは先に書いたとおりだ。

09079はその際立った運動性能からすれば、私の275研究の中でも頂点に位置する存在である。コンペティションカーの価値は実際の戦績が裏付ける。アルミボディと4カム・エンジンはこの考えを実際の形に表現する唯一の組み合わせだという私の考えを、GTB/Cは確かなものにしてくれた。そしてまた、この"逸品"はひとつの時代が終わったことも表わしていた。サーキットまで快適に走っていけ、着いたら大舞台で勝利を収め、そして再度運転して家路に着ける車などほかにないからである。


ウィンストンが選んだ特別なフェラーリ275


デイトナのプロトタイプの2番目。 110mphより上の速度域でちょっと物足りなかった


もっとも価値あるNARTスパイダー。予想どおりの素晴らしさだった

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アルミボディと4カム・エンジン。80%の250GTO感覚を8%のコストで得る


標準の4カム・エンジンに換装して非常に好ましい一台になった



1966 フェラーリ 275GTB コンペティツィオーネ
エンジン:3285cc V12 SOHC(バンク当たり)ウェバー40DF113キャブレター×3基
最高出力:280300bhp/7000rpm(est) 最大トルク:220lb ft(約30.4kgm)/5000rpm(est)
トランスミッション:5段マニュアル 後輪駆動 ステアリング:ウォーム・ローラー
サスペンション:ダブルウィッシュボーン/コイルスプリングテレスコピックダンパーアンチロールバー(前後とも)
ディスク重量:1100kg(est) 最高速度:155mph(約250km/h) 060mph(096km/h)加速:6秒

取材協力:Bonhams www.bonhams.com このフェラーリはアリゾナ州のスコットデイルにて2015年1月15日までオークション出品された

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Winston Goodfellow Photography:Pawel Litwinkski

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