シリーズ:ビューティフルカーライフ vol.1
奥村純一( フォトグラファー)
人は、どのような想いを胸に日々のカーケアを行っているのだろうか? 自動車収集家としても有名なフォトグラファー、奥村純一さんに聞いた。
ガレージには今、この63年式モーリス1100のほかに31年式のオースティン セブンや68年式アルファロメオ1600GTベローチェなど、なんだかんだで13台ほどを置いています。そう言うとまるで金満家のコレクターみたいですが、残念ながらそういった事実はいっさいなく(笑)、なんと言いますか、"見捨てられた車"を見ると放っておけなくなるだけなんです。
例えば68年式アルファ1600GTベローチェですが、これは決して見捨てられていたわけではないですが、ご高齢の方が所有されていて、しかし年齢の関係で運転できないまま9年が経ってしまった。それを比較的安価に譲っていただいたものです。ただしそのままでは動きませんので、今はコツコツと直している最中です。
動物に関しても同じですね。僕はアメリカン・ピット・ブル・テリアという希少犬種を飼っているため"犬好き" と思われているみたいですが、実際は犬好きというよりは"動物好き" なんです。その犬も、施設で保護されていたところを、どうしても放っておくことができなくて引き取ったんです。今ではその犬(名前はエリザベスといいます)とは大の仲良しで、手放すつもりなど毛頭ありませんが、世の中には保護犬を飼ってみることにしたのはいいけど、結局飼いきれなくて、再びリリース......みたいなケースも残念ながらあるんです。ですから動物の保護活動というのも、安易な気持ちでやってほしくないなとは思っています。
車に関しても、僕は決してコレクターではないので、場合によっては他の方にお譲りすることもあるんですよ。ただ、お譲りするのは「その車を僕以上に大切にしてくれそうな人」に限ります。やはり大好きな車が、それも貴重な歴史を背負っている車が朽ち果ててしまうのは、悲しくも不幸なことですからね......。
洗車やワックスがけは頻繁に行ってますよ。「3回ぐらい雨の日に乗ったから、そろそろまたワックスかけようかな」みたいに。正直、その作業が好きかと聞かれればそんなこともないのですが(笑)、やはり自分の車が汚れているのは許せないし、水を弾かない車に乗るのは恥ずかしい気がするんですよね。ここ最近は、簡易なスプレー式のガラスコート剤というんでしょうか、あれをいただいたので、それで済ませることもあります。簡単で便利で、決して悪くないですよね。
でもやっぱり、良質な固形ワックスをしっかりとかけ、そして拭き上げていく......という一連のアナログな流れというか、重厚で静かな時の流れと、インスタントな何かの間には、「越えられない壁」があるような気がしてなりません。単純な話としてはやはり仕上がりが違いますし、僕自身の心持ちも全然違う。例えばティーバッグでもお茶はお茶ですが、僕の場合はちゃんとしたお茶をいただきたい―と、そのように思っています。
奥村純一
横浜市出身。20代で購入した、いわゆるカニ目を皮切りに旧車に傾倒。現在は64年式フォード・アングリアなど約15台を所有し、ヒストリックカーレースにも参戦中。
深みの艶を造り出す高品質なカルナバ蝋を使用
今回使用したのはシュアラスター マンハッタンゴールドワックス。最上級カルナバ蝋をふんだんに使った究極のワックスだ。艶を出すため不純物を可能な限り取り除き、1号とコスメティックグレードのみを使用している。
http://www.surluster.jp
文:谷津正行 Words: Masayuki TANITSU
写真:奥村純一 Photography: Junichi OKUMURA
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