古きよき60年代ポンティアック・ボンネビルで広大なオーストラリアの原野を走る

ポンティアック・ボンネビル

1963年式ポンティアック・ボンネビルを駆って、はじめは軽いドライブに出掛けたはずだった。だが結果的にはオーストラリアのアウトバックに誘われて、2000kmにおよぶ大冒険に。これは、その旅の記録である。

まっすぐ。ひたすら真っ直ぐ
まずい事態を先に打ち明けておこう。今この原稿をタイプしているのは、人気のないオーストラリア内陸部、そう、アウトバックのど真ん中だ。家から1000kmも離れたこの場所で、車が故障して立ち往生しているのである。ただし良かったと思えるのは、その車が1963年ポンティアック・ボンネビルであることだ。ここまでの旅は本当に素晴らしいものであった。

元々はほんの軽いテストドライブのつもりだった。この50年前のアメリカンカーで、ガールフレンドとメルボルンからグレートオーシャンロードへドライブに出掛ける計画を立てたのだ。それだけで終われば今頃無事に帰宅出来ていただろう。だが、それでは気持ちが治まらなかったし、こんな状態になったとしても、そうしなくてよかったと本当に思う。その理由を分かってもらうには、まずこの車のことを知ってもらわなければならない。

この2ドアクーペ(ポンティアックは"ハードトップ"と呼ぶ)に初めて乗り込んだのは2週間前のことだ。ドアがガシャンという金属質の音をたてて閉まると同時に、退屈な現実も複雑な現代社会も消え去った。古きよき60年代の豪華なカーデザイン。広々としたベンチシートに腰掛けると、エレガントでゴージャスなインテリアに取り囲まれて、くつろいでいる自分がいた。もちろん便利な装備も満載だ。カーテシーライトは、室内のほかトランクとボンネットにも付いているし、クォーターウィンドウには、それ専用のハンドルも付く。一方、窓枠やBピラー、センターコンソールなど、格好の悪い余計なものは一切付いていない。ぴかぴかのラジオのスイッチを動かせばメタリックないいサウンドが響き渡る。コラムシフトは磨き上げられたスチール製で、正確な位置に気持ち良くおさまる。計器パネルのP-N-D-Lというインジケーターはおなじみのものだが、ポンティアックの1963年版オーナーズガイドによると、「ドライバー・レフト」と「ドライバー・ライト」という2つのポジションがあり、「ドライバー・ライト」では2速までしか使わないとある。

この車の役割は、A地点からB地点へ移動することではない。過去へと時間をさかのぼることだ。本当にタイムマシンに乗って60年代にやってきたような気分になる。ガソリンはタダ同然の値段で、大きいほど良いとされたあの頃。エンジンサウンドは、霧の立ちこめた港で聞くタグボートの音のようだった。ちっぽけなキーを回すと巨大なエンジンが始動する。ラインナップの中では排気量は最小だが、それでも6.4リッターもある。加速はさすがに猛烈だ。アクセルペダルを踏み込んでいくと、とんでもないトルクの勢いで車が一瞬わずかにロールするほど。またパワーステアリングのアシストも半端ではないから、小指でも回すことができる。路面からのフィードバックなどという説教くさい感覚とは無縁な乗り物だ。

200kmのショートトリップという当初の案はピラーレスの窓からポイッと投げ捨てて、アウトバックを南北に走るシルバーシティハイウェイへ向かうことにした。いざ往復2000kmの旅のはじまりである。シフトを「ドライバー・レフト」に入れて303bhpのパワーを解き放ち、1.7トンの巨体で砂漠へとひた走り出した。

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編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation:Shiro HORIE 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Marc Obrowski

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