あなたの知らないオートモビリアの世界|AUTOMOBILIA 第1回

オートモビリア



オートモビリアの第一回として何をとりあげるか悩んだ末、ブガッティ・タイプ57のカタログを選んだ。カタログとは本来、購入する際のツールのひとつである。カタログを通して検討し、購入車種を決めたらお役御免。そこでカタログの持つ文明的な価値は失なわれてしまう。ところが、時間の経過とともに文化的価値は高まっていく。文化とは保存し守ることによって醸成される。その顕著な例のひとつがカタログではないかと思っている。

わたしは中学生の頃からブガッティというクルマに魅かれていた。これはいうまでもなく月刊誌カーグラフィックの影響が大である。畏れ多い気がしてブガッティの実車を手許に置こうなどと考えたことは一度もないが、書籍を中心としたブガッティ関連の紙モノは、わたしにとって重要なアイテムのひとつであり続けている。



ブガッティのカタログの中ではタイプ 57のものが最も種類が多い。ここに掲載しているのはまだその一部で、この他にも数種類の存在が確認されている。これらのほとんどはパリの古書店で求めたもの。その古書店については、また別の機会に紹介させていただきたい。

タイプ 57のカタログの中ではアトランティックが異色である。アトランティックの実車は現存4台と少なく、記載したカタログがあるとは思わなかった。最初にアトランティックのカタログの存在を知ったのは、イタリアのFMR(Franco MariaRicci)から1991年に5000部限定で出版された「DIVINABUGATTI」という本に、そのカタログの縮刷版が収まっていたことに因る。美しい雑誌の版元としても知られるFMRだが、「DIVINABUGATTI」は、数あるブガッティ関連書籍の中で最も美しい一冊だと思う。

同書に収まった縮刷版では赤い表紙として表現されていたタイプ 57のカタログ。実物は遥かに凝ったものだった。赤く着色されたビニールの透明ページが表紙の前にあり、表紙自体は赤くない。これなど、実際のカタログを手にしない限りわからないことだろう。このように些細な差異を発見してたのしむのも、オートモビリアならではのこと。

百聞は一見に如かず、拙い写真で恐縮だが、大人の絵本のごときカタログを眺めるたのしみ、の一端が伝わることを願うばかりである。

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文、写真:板谷熊太郎 Words and Photos: Kumataro ITAYA

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