アメリカの「歴史遺産」という栄誉を得たシェルビー・コブラ・デイトナの数奇な運命

シェルビー・コブラ・デイトナ・クーペ(Photography: Michael Furman)



相次いで殿堂入り
シメオネは語る。「あの車は1965年にシェルビーのもとを離れてから何の手も加えられていない。私だって注意したのは常にグッドコンディションにしておくことだけだったよ。唯一手を入れたのがノーズにできたへこみをリペイントしたくらいだね」

CSX2287に7番目の転機が訪れたのは2014年の初めである。アメリカ合衆国国定歴史遺産のひとつに「国が定める歴史的価値のある車」という項目が加えられたが、その第1号にこのシェルビーが登録されたのである。「遺産登録とは普通、保存する価値のある歴史的建造物に対して行われるのでとても興奮したよ」とはシメオネの感想だ。

2014年の終わりにはさらに8番目の節目がやってくる。冒頭の栄誉がそれだが、この大賞は一般からの投票によって決められる唯一のカテゴリーで、私はオクタン編集長にこのデイトナがどれだけ支持されたのかを尋ねると、彼は「びっくりするくらい圧倒的な差を付けての栄冠だったよ」と教えてくれた。ちなみにオクタンはこの賞のスポンサーになっている。

ピート・ブロックはこう語っている。「時の経過というものは人々の物の見方を変えるものですが、この栄誉を今という時代に獲るというのはすごいことですね。今日、われわれは歴史をつなげた形で見ることができますが、そうすることで物事はいっそうはっきりと見えてきます。車もそうです。80%は正しいと思う新しいデバイスを車に採用してみると、大きな抵抗を受けることがあります。でもいつか信じたものが認められるというのは設計者冥利に尽きますね」

この車に起こる9つめの変化がどんなものになるのか。それを知るには時の流れを待つしかなさそうだ。


シェルビー・コブラ・デイトナ・クーペ
エンジン:4727cc、V8、OHV、、ウェバー48 IDAキャブレター×4基 最高出力:390bhp/6750rpm 
最大トルク:340lb ft(約47.0kgm)/4000rpm (est) トランスミッション:4段マニュアル 後輪駆動
ステアリング:ボール循環式 サスペンション:ロワーウィッシュボーン/横置きリーフスプリング/テレスコピックダンパー(前後とも)
ブレーキ:ディスク 重量:1043kg 最高速度:187-198mph(約300-319km/h) 0-60mph(0-96km/h)加速:4秒 (est)





この美しくも飾り気のないシンプルなスタイルは1963年にデザインされ、1964年に最初の1台が出来上がった。そのあともたった5台が作られただけである

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編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation: Hidehiko OZAWA Words: Winston Goodfellow 

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