ルイーズとピーター|フェラーリ所属のGPドライバーと舞台女優の美しくも儚い日々

Photographs: Louise King Collins Archive



「1957年だったの。私がマイアミで仕事をしていたときよ。ピーターがレースの合間にマステン・グレゴリーと見に来たんだけれど、『ショーのあとで彼女をディナーに誘え』とスターリングに焚きつけられていたのね。共通の友だちと一緒にいた彼のテーブルに、仕事が終わった私も混ぜてもらったわ。私は彼のことを知っていたけれど、彼は私のことを知らなくて…。しばらくおしゃべりしていたら、突然ピーターが立ち上がって、『デートで食事の約束があるから行くと』というのよ。私は動揺してしまって、相手が誰なのか聞いたの。そうしたら彼ったら『ルイーズ・キングだよ』っていうの。それですっかり打ち解けて、素晴らしい夜を過ごしたの」

二人はこの数日後に結婚した
「ピーターと私の生活は、アメリカでのレースの合間にお互いの家族や友人を訪ねて回ることから始まったの。マーキュリーのステーションワゴンを買い、レースシーズンに備えてイギリスへ送ったわ。その後、マーキュリーをダンカン・ハミルトン(訳註:英国人レーシングドライバー、1958年の引退後にディーラー経営)に売って、ランチア・フラミニアを買ったのよ。そのランチアのおかげで、フェラーリから250スパイダーをもらうことになったのだから、わからないものね。エンツォ・フェラーリは素敵な人でね、私たちがモデナに滞在するときは、彼の家を使わせてくれたわ。でも、エンツォはピーターがランチアに乗っているのが気に入らなくて、それでフェラーリをプレゼントしてくれたのよ」

「私たちは、ごく普通の生活をしていると思っていたのよ。プレゼントされたフェラーリを足に使って、レースに、いろいろな友人たち、モンテカルロのボートもね。でも、これは特別なことなんだとわかったのは、ローマで友人の俳優、ピーター・ユスティノフと一緒にいて、パパラッチに追いかけ回されたときよ。私たちは、そういうことには慣れていなかったのね」

ピーター・コリンズといえば、フェラーリのチームメートであったマイク・ホーソーンと厚い友情で結ばれていたことが有名だ。それに焦点を当てたクリス・ニクソンの著書、『MonAmi Mate』がある。 

「マイクにとって、ピーターと私は安心できる心の拠り所だったのよ。彼は病気も抱えていたしね。一緒にいろいろ楽しんで、マイクは私たちの生活の中の欠かせない一部になっていたの」

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Massimo Delb. 

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