真二つに評価が別れた英国車「ラ・サルト」は、伝統の継承者か?名車ディティールの寄せ集めか?

Photography:Tim Andrew 



ラ・サルトについてベンスポーツのウェブサイトでは、「レプリカではなく、改造でもなく、もちろん真似ではない」と明快に宣言している。ロバートはさらに詳しく説明する。「プロジェクト全体の論理的根拠は、ベントレーが創りあげ、1950年のル・マンで戦ったかもしれない車を造ることだった。1938年に造られたエンブリコスが少々のリファインのみで1949年にいかに健闘したかを考えれば、それはおそらくかなり成功したはずだ。だからネーミングに関しては、ミュルザンヌやアルナージュのように、コース名からル・マンを思い浮かべる名前がほしかった。そしてまだ誰も肝心のシルキュイ・ドゥ・ラ・サルト、すなわちサルト・サーキットそのものの名を採用していないことに気づいた。正に、これ以外には考えられなかったね」ロバートは、ラ・サルトが現在たいへんな高騰の渦中にあるRタイプ・コンチネンタルの"ローコストバージョン"ではないことを強調する。

「ラ・サルトの顧客がすでにRタイプ・コンチネンタルのオーナーであることも十分あり得ますが、Rタイプ・コンチネンタルは今やよい状態の個体で100万ポンドはするので、普段使いには躊躇するでしょう」これに対して、ラ・サルトは使うための車であって、投資として購入され、倉庫にしまい込まれるべきものではないという。実際、オリジナルRタイプ・コンチネンタルより軽量で、性能やハンドリングはむしろ勝っている、真のドライバーズカーなのだ。

プロトタイプ
現在、ラ・サルトは1台しか存在しない。これはまだ問題を抱えるプロトタイプであり、いわゆる未完成品だからだ。その一例はドアウィンドウである。信じられないだろうが、それは現在のところはポリカーボネイト樹脂製だ。理由は2014年、ショーの直前に供給された窓ガラスのクォリティの問題だった。現在では、平面の安全ガラスはフロントウィンドウ等に使われる曲面グラスより入手が難しいものになっていた。だが、この車そのものは決して妥協の産物ではない。ボディは外部業者によるハンドメイドで、完成車の見た目からは窺い知れない努力と汗がこの車の洗練を生み出していることに気づく。エッグシェルグレーに塗られたそれは、実に見事な仕上がりだ。量産モデルはコヴェントリーの専門業者により製造と組み立てが行われることになっている。「ボディがどれほど素晴らしいかご覧頂くために、未塗装のホワイトボディのままで引き渡したいくらいだ」とロバートは付け加えた。

編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation:Kosaku KOISHIHARA Words:Mark Dixon 

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