真二つに評価が別れた英国車「ラ・サルト」は、伝統の継承者か?名車ディティールの寄せ集めか?

Photography:Tim Andrew 



ある日、ロバートはある顧客から、その顧客自身のデザインによるシャプロン風のボディをベントレーMk6シャシーに載せるよう依頼された。もちろんそのデザインの権利は顧客のものだったが、ロバートは長い経験からさらに多くのインスピレーションを得て、顧客のデザインとは異なるオリジナルデザイン、すなわちこのラ・サルトとほとんど変わらないスケッチを数分で創り出した。これがこのプロジェクトの始まりだった。「そのスケッチから、ボディの基本ラインを決めるための平面図と一連の断面図を描き、CADにプログラムした。そして元ジャガー・ランドローバーのデザイナーだったトニー・ハンターが、フルサイズのプロトタイプ用にコンピューター上でラインの修正を行ったのだ」

ベントレーMkVIとその後継たるRタイプを比較すると、Rタイプはボディ・リアエンドのデザインを改めたと同時に後部ボディ全体が変更されているが、基本的には同じシャシーを持つ。ロールス・ロイス社は戦後、それまでの営業方針を変更し、初めて自社製のボディを載せた車両の販売を開始した。これは戦後復興に必要な外貨を得ることを目的にした輸出拡大のためであったが、量産のためボディは鋼板製となり、それゆえにスタンダードスチールサルーンと呼ばれる。それまでは、RRとベントレーは社外のコーチビルダーが木骨にアルミボディを被せる構造のボディを架装していた。スタンダードスチールサルーンが誕生した戦後のこの時期は、素材の鋼板の質も悪く、数十年を経るとボディの腐食が目立つようになった。しかしシャシーは総じて問題なく生き残っていた。「もしRタイプのシャシーが入手できるなら、そちらがベターだ。なぜならクルー工場では各部を補強しリベット留めを溶接に切り替えるなど、常にシャシーに改良を加えていたからだ。しかし、もちろんMk6のシャシーでも何も問題はない。初期のRタイプ・コンチネンタルはこのシャシーで作られたのだから」とはボブの弁だ。もしも可能であれば、コンポーネンツのナンバーが揃った個体の方がさらによい。つまりオリジナルの登録が残っているかも知れないからだ。当局がますます官僚的になっているこの時代では、これは喜ばしいボーナスだ。

編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation:Kosaku KOISHIHARA Words:Mark Dixon 

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