アルピーヌのスピリットが生き続ける限り│新旧A110でフランスを訪ねて

Photography: Matt Howell

モダンはレトロと対立し、新しいものは旧いものと対立する。アルピーヌA110はアルピーヌA110自身と対立するのであった。新型のA110には試乗したことがあったが、オリジナルの旧型A110には、憧れ続けていたが乗りこんだことは無かった。そして、遂にステアリングを握る時が来たのだ。新型と旧型でフランスへとロードトリップをしてみた。

残念なことにこれは私の車ではない。ルノーUKが所有するものだ。そもそも、A110は1963年にパリサロンでデビューを飾った2シータースポーツカーである。先代モデルのA108より洗練されたスタイルを持ち、小ぶりなボディが控えめな印象だ。



1964年に1.1リッターモデルが登場し、1965年には「ゴルディーニ」がチューニングを施した1100ゴルディーニが発売された。1966年には、1.3リッターエンジンを搭載する1300ゴルディーニが登場。そして、ここにあるのはA110の中でもアイコン的である1976年に登場した1600 SXモデルだ。

1977年製のこの1台は、新型A110が開発途中のなか、スペインで発見されたものだ。"サウンドはしっかりとしていたから、とりあえずペイントを施しました"とコレクターのスティーブ・ガルトが述べる。ラリースタイルのタイヤはノーマルのものに交換されている。

A110はとてもコンパクトな車である。コックピットは低く、狭い。左の肩がドアに当たるし、脚のスペースも窮屈だ。いかにも、ラリーカーらしい。小ぶりで控えめな車であるが、ロータス・エランよりもタフなボディを持っている。2つの小さなリアタイヤの上にあるキャビンは、手荷物を入れていっぱいだ。ボンネットは、スペアタイヤと燃料タンクでぎゅうぎゅうになっている。ルーフピラーはスリムでガラスが多く使われているため、閉所感は緩和されている。



新型と旧型でトンネルを過ぎ、2つを並べてみると旧型がとても小さく見える。ガラスの効果もあり、繊細で美しいカーブを描いているのだ。フラットなトップ、綺麗にはね上がったリアアーチにもデザインの未来を感じる。



確かにオリジナルA110は極めて完成度の高い車であるが、新型にその要素を入れすぎていないということはルノーの賢さであろう。新型A110は旧型とは全く異なる車と考えたほうが賢明だ。新型が劣っているわけではなく、こちらはより速く、非常にバランスの取れた車である。軽量化が徹底的に行われ、車重は1100kgという驚異的な数字。スポーツ・モードにすればステアリングは重くなり、スロットルと変速のレスポンスは鋭くなる。ステアリングの感覚も抜群だ。

Words: Matt Howell

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