欧州では定番の収集アイテム「自動車ピンズ」の魅力|AUTOMOBILIA 第2回

Photos:Kumataro ITAYA



ベルボーイから貰ったピンズ
このような話をしたのは、コノートのドアボーイからピンズをもらったことが忘れられないから。いつの頃からかは忘れてしまったが、コノートのドアボーイが若い人に代わった。そしていつしか、彼がメインでドアボーイを務めるようになっていた。

そんなある日の朝、彼の襟についているホテルの紋章を象ったピンズ、というよりやや大きめのバッチ、が目に入った。預けているクルマが用意されるまでの短い間のつなぎに、本当にごく軽い気持ちで、綺麗なバッチだね、と褒めた。

夜、ホテルに戻ると部屋にバトラー(執事)がやってきた。コノートは各室にバトラーがついているのがウリのひとつになっている。バトラー氏、こちらドアボーイからです、と小さな封筒を差し出した。

早速開けてみると、封筒からでてきたのは、その朝、私が褒めたホテルの紋章のバッチだった。

その日以降、わたしがホテルを去る瞬間まで、若いドアボーイの襟にホテルの紋章を象ったバッチはなかった。

今回の肴
さまざまなものは、どれもおしなべて思い出のインデックスになりうるのだが、とりわけピンズは追憶の先導役に相応しいように思う。わたしの場合、小さなピンズを眺めるたびに、それぞれの奥に広がる記憶の海に漕ぎ出すような気分に浸ることができる。

さて、今回、写真に収めたのは次のようなものである。●ミトスのピンズ:先に記したようにジャンマリア・ブチェラッティ作。ピン自体はもちろん素晴らしいのだが、箱も見事。さすがにもったいなくて箱も紙袋も大切にしている。箱の内側にはジャンマリア・ブチェラッティ・フォー・ピニンファリーナとある。この箱書を目にするたび、ランチア・テーマ8・32のフロントシートに取り付けられた、ポルトローナ・フラウ・フォー・ランチアのタグが思い出される。

●ピニンファリーナのピンズ:イタリアのピンズには巾着に入れられたものが多く存在する。ピニンファリーナのマークのついた巾着に収められているのは、同社のエンブレムのピンズ。純銀製である。





●ジャンニーニのピンズ:巾着繋がりで。ジャンニーニのようなマイナーどころにもしっかりしたピンズが存在しているのを知ると、思わずうれしくなる。



文、写真:板谷熊太郎 Words and Photos:Kumataro ITAYA

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