あれほど支持が高かった「フォード・アングリア」がカーレースから姿を消した理由とは

フォード・アングリア



アングリアを運転するのは忙しいけれど、決して怖くはない。これが中毒症状を引き起こす原因でもあるのだが、そうやって様々なことを試すうちに、だんだん1960年代よりも戦前の車のほうが楽しく思えるようになってくる。その意味においてアングリアは当時を代表する1台といえるが、それゆえに時代性に左右されやすく、また気まぐれともいえるレギュレーションの改正の影響もあって最近ではサーキットで目にするのが希になっている。

フォードは苦心の末にコルティナGTのキャブレターでグループ2のホモロゲーションを取得することに成功したものの、もしもこれが失敗に終わってウェバーのツインチョークしか選べなかったなら、最近よく見かけるミニと同じレベルに留まっていただろう。私がレースで走らせていたアングリアは158bhpを絞り出していたが、これはミニには到底望み得ない性能だった。この結果、1200ccのアングリアに乗るジョン・フィッツパトリックは1966年イギリス・サルーンカー選手権を制し、ツインカム・コルティナでヨーロッパ・チャンピオンに輝くなどの栄冠をフォードにもたらした。

やがてエスコートが登場すると、アングリアはその後も数年間はクラブマンレーシングで活躍したものの、ホモロゲーションの関係もあって徐々にレースの表舞台から姿を消していくことになる。

現在、国際的なヒストリックカーはその大半が66年以前のグループ2レギュレーションに従っているが、この結果、アングリアはコルティナのキャブレターを使わざるを得ず、したがってケンプとロストロンのアングリアが優勝争いできるようなレースは皆無に近い状況となっている。それでも、彼らがアングリアを所有することに心から満足していることだけは間違いないようだ。


これぞアングリア・ファン垂涎の姿。内側の前後輪をリフトさせてコーナリングするブロードスピードのチームカー。これは1968年4月15日、英国サルーンカー選手権の第2戦スラックストンでのショット。クリス・クラフトのドライブで排気量997ccながら総合5位、クラス1位の好成績を収めた。1位と2位は4.7L V8のファルコン・スプリント、3位と4位はコルティナ・ロータスと、フォードが5位までを独占した。アングリアのライバルは6位と7位に入ったフィアット・アバルト1000TCRだった(photo=Ford Motor Archives)


The FIA’s Groups decoded
FIAグループ規定

Category A 認証量産車
グループ1:12カ月間に最低5000台が生産されたシリーズ・プロダクション・ツーリングカー。市販された状態に近いスペック。
グループ2:12カ月間に最低1000台が生産されたプロダクション・ツーリングカー。最低限のモディファイ、同じクラス内であればギアボックスの交換は自由、ダンパーやカムシャフトはフリー、キャブレターやエグゾーストマニフォールドなどはホモロゲーション・パーツであること。
グループ3:12カ月間に最低500台が生産されたグランドツーリングカー。グループ2と同程度の改造範囲。MGB、TR4、ジャガー Eタイプ、ACコブラなどが含まれる。
グループ4:12カ月間に最低50台が生産された量産スポーツカー。フォードGT40、フェラーリ250LMなど。

Category B 特別改造量産車
グループ5:特別ツーリングカー。量産モデルをベースとしながらエンジンやサスペンションに幅広い改造が認められる。アングリアであれば1966年イギリス選手権を制したダウンドラフト・シリンダーヘッドなど。
グループ6:量産する意図のあったプロトタイプスポーツカー。フォードGTマークII、マトラ、ル・マン・プロトタイプなど。公道を合法的に走行できることが条件。

Category C レーシングカー
グループ7:レース専用に開発された2シーターカー。ロータス23、エルヴァBMW、ローラT70、マクラーレンM1カンナムなど。公道を走行できるかどうかは不問。
グループ8:F1、F2、F3などのフォーミュラカー。
グループ9:フォーミュラ・リブレ。上記のいずれにも属さないレーシングカー。オーストラリアン・スペシャル、マスタング・エンジンを搭載したフォード・アングリアなど。



1965年スーパースピード・フォード・アングリア・レプリカ
エンジン:1298cc、4気筒、OHV、ウェバー28/36 DCDダウンドラフト・ツインチョーク・キャブレター 
最高出力:105bhp/8000rpm(概算値) 最大トルク:85lb-ft/6000rpm(概算値) 変速機:前進4段MT、後輪駆動
ステアリング:ウォーム・ローラー、ドラッグリンク、アイドラー
サスペンション(前):マクファーソンストラット、コイルスプリング、アンチロールバー、トライアンギュレイティング・ローワーリンク
サスペンション(後):リジッド式、リーフスプリング、レバーアーム・ダンパー
ブレーキ:前輪フォード・コルティナ用フロントディスク、後輪ドラム
車重:800kg(概算値) 性能:最高速度110mph(177km/h)、0-60mph 7.5秒(概算値)

1965年ブロードスピード・フォード・アングリア・レプリカ
エンジン:1298cc、4気筒、OHV、ウェバー28/36 DCDダウンドラフト・ツインチョーク・キャブレター
最高出力:105bhp/8000rpm(概算値)最大トルク:85lb-ft/6000rpm(概算値)変速機:前進4段MT、後輪駆動
ステアリング:ウォーム・ローラー、ドラッグリンク、アイドラー
サスペンション(前):マクファーソンストラット、コイルスプリング、アンチロールバー、トライアンギュレイティング・ローワーリンク
サスペンション(後):リジッド式、半楕円リーフスプリング、レバーアーム・ダンパー
ブレーキ:前輪フォード・コルティナ用ディスク、後輪ドラム
車重:800kg(概算値)性能:最高速度 110mph(177km/h)、0-60mph 7.5秒(概算値)

編集翻訳:大谷 達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Mark Hales Photography:John Colley

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