クルー&グッドウッド・ロールス-ロイス|Jack Yamaguchi’s AUTO SPEAK Vol.7

1967年、クルー工場建屋外に置かれた新型シルヴァー・シャドウのボディ群



シャドウは、全鋼製モノコックボディ、全輪独立サスペンション、前後油圧自動車高制御(後期型はリアのみ)、ボール循環式パワーステアリング、2系統油圧4輪ディスクブレーキなど、最先端メカニズムを採用した。ブレーキと車高調整油圧システムは、シトロエン特許によった

エンジンは、クラウドIIIで先行していたOHV 6.2リッターV8である。クラウウドでは、GM特許による遊星ギア式4ATを備えたが、トルコンではなくフルードカプリングを使用、短いコラムレバーでマニュアルシフトができる。シャドウでは英国と欧州仕様はフルードカプリング式4ATを標準とするが、販売の50%を占める対米モデルにはGM製トルコンATを設定した。アメリカの客は、スタート食いつき感(ローンチフィール)と段差を感じさせない、なめらかなシフトを求める。ドイツ上級勢は、すでにOHCエンジンの方向に走っていたが、R-R技術陣は、バルブトレイン騒音は高級車にふさわしくないとOHVを選んだ。

そう、クルーの工場の一角では、梯子型フレーム、リア板バネのファンタムVシャシーを手組みしていた。R-R傘下のロンドン・ウィルズデンのコーチビルダー、H.J.マリナー・パークウォード社がリムジーン、ランドウレット・ボディを架装した。後日、ここを訪ねた時は、創立者の後裔チャールズ・ウォードが案内してくれた。

グッドウッド工場とマルチモデル
1998年、BMWはヴィッカースからR-R商標権を買い、クルーはVWグループのベントレー専用工場となった。BMWはサーキットやフェスティバル・オブ・ザ・スピードで有名な、グッドウッド荘園内に新工場を建設した。現在、R-R社はファンタム、同ドロップヘッドクーペ、ゴースト・サルーン、レイス・クーペを生産している。今秋のフランクフルト・ショーで発表するドーン・ドロップヘッドクーペ、そして2017年にはプロジェクト"カリナン"(SUV)が加わる。

2015年のグッドウッド工場の組み立てラインは、1967年クルー同様、センターレール上のボディを手押し組み立てしている。

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Kyoichi Jack Yamaguchi
山口京一、海外執筆名:Jack Yamaguchi
私がアングロファイル(イギリス愛好者)になったのは、1960年代、幸運にも足掛け3年滞英できたからだと思う。以来、何十回かイギリスを訪れてきた。

文、写真:山口京一 Words and Photos: Jack Yamaguchi

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