ポルシェがたった一台製作した901のカブリオレ・プロトタイプ

Photography:Paul Harmer



走り出すと、901カブリオレはとても小さく繊細に感じる。室内トリムはいかにも試作車然とした安っぽいビニールだが、ドアはあの決まり文句の"金庫のように"カッチリ閉まり、ボディそのものは非常に良い状態であることが分かる。サイドウィンドウは樹脂製で、ボンネットの下に収められたスペアタイヤにはまだチョークで書かれた「Fallversuch」という文字が残っていた。これはドイツ語の"研究"である。中央部がチェック地のシート(オリジナルではなさそうだが、当時のもの)は、ふわふわしていてまるでサポートしてくれない。評判がよろしくなかったソレックス・キャブレターを備えた2リッターエンジンは騒々しく吹け上がる。ギアシフトはちょっと位置決めがルーズな感覚だが、クラッチは軽く扱いやすかった。

普通に走る限り、901カブリオレは初期の他の911と大差ない。356カブリオレと比べてもボディ剛性がそれほど劣っているわけでもなく、心配していたようなシミーやシェイクを垣間見せることもなかった。901カブリオレは軽く、敏捷であり、乗り心地はむしろソフトだがブレーキやステアリングのレスポンスも確実で申し分ない。視界の良さについては言うまでもないだろう。

この車は、遠慮なく6000rpmのリミットまで回してロードテストするような車ではない。何しろこれはワンオフの901カブリオレ・プロトタイプであり、たった一台残った901カブリオレなのである。アレックスの考えている通り、このままソフトトップなど作り直すことなく、大切に保存されるべきである。以前のオーナーであるマイロン・ヴァーニスも語っている。「世界でたった一台の901オープンを持っているのなら、屋根を閉じてそれに乗る気になるかい?」

まったくその通りである。


1964年ポルシェ901カブリオレ・プロトタイプ
エンジン:1991cc水平対向6気筒SOHC、ソレックス・ダウンドラフト・キャブレター×2基 
最高出力:130bhp/6100rpm 最大トルク:130lb-ft(176Nm)/5000rpm 
トランスミッション:5段マニュアル、後輪駆動 ステアリング:ラック・ピニオン
サスペンション(前):マクファーソンストラット、ロワーウィッシュボーン、トーションバーテレスコピックダンパー
サスペンション(後):セミトレーリングアーム、トーションバー、テレスコピックダンパー
ブレーキ:ディスク 車両重量:1150kg 性能:最高速度=125mph(201km/h)、0-60mph=8.5秒

編集翻訳:高平 高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:Robert Coucher 

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