クラシックカーの世界はどこまでも深い?│レトロモビル2019速報(後編)

パリで開催中のクラシックカー蚤の市「RetroMobile」では、高額車両を求めて来場しているらしき人の姿も多く見かけることは前編でもお伝えした通りだ。実際にコレクターらしき数人に話を聞いてみた。

50代らしきご夫婦。「もともと車が好きで集めていたら、いつの間にか価格が上がってきたので、いくつかを手放して本当に自分たちで乗りたい車を手に入れようと思っています。でもまだ最高の一台には巡り合っていません」





30代の男性。「若いころから速い車が好きでフェラーリ458や488、ランボルギーニ アヴェンタドールなどを乗り換えてきたけれど、少し落ち着いて走りたくなったのでクラシックカーを何台か持つようになった。他人と違う独特のイメージが最高だね」





彼らの予算はすでに自動車を購入するに足る金額をはるかに超えているが、それでも特段それをおかしいと思っている様子はない。販売をしているブースでも話を聞いてきたが、彼らはオリジナルを大事にしたレストアを施すことや、どこにもない希少なクラシックカーを見つけてくることに多くのパワーを掛けており、その対価としての金額としては「妥当」という意見だった。

「どんなに新しい車の性能が上がって便利になっていっても、2度と創りだすことに出来ないクラシックカーには適わない。価値が残るのは古くなって処分に困るような車ではなく、きちんと人間の知恵が詰まっていた時代までの車で、しかもデザインに優れ希少であることが条件。そうだな、1980年くらいまでが最後でしょう」



来場者の年齢層は高く50代以上がほとんどだ。フランス以外のヨーロッパはもちろん、北米やアジアからの来場者も多くなってきているという。新車で最も高額なもので数億円という時代だが、コストから算出するプライシングではなく、アートのようなステージに昇華してしまったクラシックカーにいかほどのプライスが付いていても、ここでは誰も驚かなくなっている。RMサザビーズやボナムスといったオークションも、この時期に合わせてパリ市内でクラシックカーオークションを開催。クラシックカーとしての最高金額を塗り替える落札があっても、もう誰も驚かないことではあろう。



1976年の第一回レトロモビル開催時から運営に関わってきて、現在のタイトルは運営コンサルながら実質的なヘッドを務めるフランソワ氏に話を伺ってみたら、クラシックカーの価値について改めて考えさせられるものがあった。以下がお話ししてくれた内容である。



「レトロモビル開催当初は、ただ広いスペースにカーペットもなく、まるでフリーマーケットのような雰囲気で自動車愛好家が集まっていただけでした。といっても、その当時は1950年代の自動車など普通の中古車であり、クラシックカーといえば戦前の自動車を意味していました。初めから大事にしているのはテーマ。いい文化を次に繋げていくことこそ、レトロモビルが担っている使命であり、現在もテーマを決めることは大きな意味をもっています」

「10日間の開催だった頃は7万5,000人の来場者。そこから、出展者への負担をかんがみ5日に短縮した時期がありました。それでも、7万人の来場者が訪れたのです。そこから一気に、イベント全体の密度が増していたように記憶します」

「最近は高額車両の出品やオークションが目立ち、ややもすると富裕層のみを大切にしているようなイメージがあるかもしれませんが、そんなことは微塵たりとも考えていません。「2万5000€以下であなたもクラシックファン」のコーナーを観てください。あのヤングタイマーを観に来てくれる多くのファンが富裕層だけの世界でないことを象徴しているのです」



「私たちは自動車文化を愛する多くの人たちを歓迎します。クラシックカーの相場は一過性のものでないのも事実ですが、実はもっと奥深く、しかも楽しい勉強が必要です。もし日本の皆さんが来てくれるなら大歓迎します」

クラシックカーの世界というのは、人々が想像できる以上に未知であり、学びの尽きない、永遠に深くなっていくものなのであろう。


文:堀江史朗 Words: Shiro HORIE

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