コレクター垂涎のフェラーリとポルシェの「ミニカー」|AUTOMOBILIA 第4回

Photos:Kumataro ITAYA



ミニカーとスケールカーとモデルカー
長々と名称の大切さについて書いてきたのは、先にふれたように、名と文化には深い関係があると考えてのこと。残念ながらモデルカーの世界も、まだ名前すらはっきりとしないものが多いように思える。

縮尺の小さなクルマを表わす語はいくつかある。ミニカー、ミニチュアカー、モデルカー、スケールカー、スケールモデル、等々。ところが、どれも原語をカタカナにしただけか、日本風に短縮したもので、それぞれの語彙の差ははっきりとしない。それはわれわれだけが未熟なのではなく、元々の語の示す範囲が曖昧だからかもしれない。

本稿ではあえて少し踏み込んで、ミニカーとスケールカーとモデルカーに明確な語彙を与えてみたいと思う。

まずはミニカー。
ミニカーという言葉には、玩具というイメージが強い。子供が投げたりして遊んでも簡単には壊れない。口にしても部品が外れたりしない。ミニカーからは、そのような小さなクルマが連想される。

次にスケールカー。
スケールカーの語からは、大人の趣味としての縮尺モデル、を感じる。本稿では、ミニカーを玩具、スケールカーを大人の蒐集対象物、とさせていただきたい。

そしてモデルカー。
モデルカーはミニカーとスケールカーの総称としたい。

こうして、ミニカー、スケールカー、モデルカーの語彙を規定したところで、ようやく本論。いつしか、このような語彙の規定から話を始めなくてもよい日が来ることを願っている。

ミニカー
モデルカーの発祥はミニカーではないかと思っている。すなわち玩具が起源。昔、まだ小さかった頃、親から与えられたモデルカーは、マッチボックス、コーギー、ディンキーなど、玩具としての色彩が強かった。

ミニカーは玩具ではあるが、どれも固有名詞のあるクルマをできるだけ正確に再現しようとしているものだった。玩具でありながら一切の手抜きがない。おそらく、こうしたミニカーメーカーの姿勢が、チャーチルに代表される世の大人たちを魅了していったのだろう。

クルマと密接な関係のある西洋社会が、ミニカーを文化にまで昂めたのだと思う。今日でも欧州を主体にした古いミニカー、メーカー名を挙げならば、ディンキー、CIJ、スポットオン、などは、市場で高い評価を得ている。

スケールカー
ミニカーを蒐集する大人が増えたことにより、最初から大人狙いのモデルカーがつくられるようになった。そうしたスケールカーには明確な特徴がある。それは、箱に、子供の玩具ではありません。14歳以下には不向きです。などと様々な言語で記載されていること。最初から、大人だけをターゲットにしているスケールカーは、年々、つくりが精密になり、歴史に埋もれていたような稀少なクルマをとりあげるようになっている。

こうしたスケールカーの精緻化、稀少化の趨勢に逆らうように、昔のミニカーの持つ、素朴さや味わいに魅かれる大人も少なくない。

わたしはスケールカーもミニカーも、どちらも大好きなのだが、世にはミニカーしか愛せないミニカー派や、あるいはスケールカーこそがモデルカーであるとするスケールカー派が存在するようである。

文、写真:板谷熊太郎 Words and Photos:Kumataro ITAYA

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