マセラティエンブレムを付けたワゴンタイプのラグジュアリースポーツカーとは?

Images: John simister

“チンクエポルテ(Cinqueporte)”のバッヂが付いた車。その名は、マセラティの最も大きな4ドアサルーンと同じであるが、この車はエクストラのドアが付いた5ドアのワゴンタイプなのだ。そもそも、ワゴンタイプなど、マセラティが作るような車でないと感じている人々は少なくないであろう。

このワゴンタイプのマセラティは、2009年にカロッツェリア・トゥーリングが初期型クアトロポルテをベースにし、“ベラージェ・ファストバック”を4台製造したところから始まったコンセプトカーである。“ベラージェ・ファストバック”は2013年のRM Sotheby’sオークションにて11万7600ユーロで落札されている。このオークションで“ベラージェ・ファストバック”の落札を逃した、マセラティの熱狂的ファンである英国人が憤っていたのだ。



逃したならば作ればいいじゃないか となり、製作できる人物を見つけるように頼まれた。彼は、プロトタイプを製造している英国の有名な会社の名をいくつか挙げたが、どこも20万ポンド以上の製作費を突き付けてきただけでなく、とてつもない時間がかかるとのことだったのだ。その後、ジャガー・Eタイプやランチア、ブリストル、ディーノ、おもしろい車なら何でもレストアするアダム・レディングのことを知った。

アダムは挑戦を好む男だ。"4ドアのクアトロポルテを5ドアのチンクエポルテにすることが出来るか?"と聞いたら、"もちろん"と答えた。そして、白の2015年 マセラティ・クアトロポルテにナイフが加わっていったというわけだ。イタリアのコーチビルダーは、エレガントなスタイリングにおいて輝かしい評価を受けてきているが、年月が経って改めて見てみると、そのきらきらとした雰囲気の裏にあるものは極めて質素であったりする。

アダムと彼のチームは、小さな工場で細部にまでプライドを持って車を仕上げてくれ、その出来はイタリアのカロッツェリアより良いのではないかとすら思えた。



では、アダムはこの大きなボディの車をどのようにして作り上げたのだろうか?
"僕たちが生み出したコンポーネントを使うことが現実的だと考えた" クアトロポルテらしい曲線を残すため、どんなに細かなところでも長さを測っていた。リアクオーターを開き、ルーフの大半を取り除き形を作っていった。

アダムはコンピューターでいくつか完成形のイメージを製作し、オーナーと幾度もの検討を重ねていた。このリアウィンドウはアダムが6番目に提案したものなのだが、メルセデスCLSにヒントを得ているものだ。

ガラスのことが決まったら、メタルワークもそれに合うよう進められた。テールゲートも数種類試してみた。クアトロポルテのものを残すべきか、新しく作ったものに換装するべきか、様々なパーツにおいて審議がおこなわれた。ヘッドライトはオリジナルのクアトロポルテと同じ素材を使いながら新しく作ったものだ。



パーツに関してはアダムが持つ技術のおかげで難航することは無かったが、とにかく電気系統に関してが困難だったのだ。アダムは中国の会社からキットを取り寄せながら作業を進めていたが、事態は深刻そうであった。彼の友人で電気系統のプロフェッショナルであるミッキーが車を引き取り、テールゲートに関しては進展したが、エアバッグライトのリセットについてはマセラティのディーラーでないと施すことのできないものであった。

結果的に、アダムはチンクエポルトを作り出すのに1500時間を費やした。今となっては3Dパーツで現存パーツを製造することが出来るから、1台あたり1000時間程で出来るだろうと話している。

マセラティのオフィシャルファクトリーで誕生したものではないが、スタイルにおいても、完成度の高さにおいてもファクトリーの仕事を上回るものがあるのではないかと思う。テールゲートは完璧にフィットしていて、形も極めて美しい。ドライブするにあたっても、この快適さはまさしくサルーン車そのものである。ミラー超しにボディの長さを見て、車のユニークさに改めて気付かされる。

Words:John simister 翻訳:オクタン日本版編集部

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