ポルシェ史上もっとも美しいとも評される「カレラGTS 904/6」の魅力とは?

1965年ポルシェ・カレラGTS 904/6(Photography:Charlie Magee)



6気筒を搭載
1965年シーズンの終わりには、最高出力180bhpを発揮する901フラット6のレーシング・バージョン(ツイン・プラグとツイン・イグニッションを装備)をカレラGTSに搭載する準備が整う。このとき、シャシーナンバーの最初の3桁はそれまでの904から906に改められた。1966年にはスペースフレームを与えられた後継モデルの906"カレラ6"が登場する。それまでに7台が生産された904/6のうち、いまも生き残っているのは4台に過ぎない。

私たちが取材したのは"906-011"のシャシーナンバーを持つ、元ファクトリーカーで、ボディ中央に取り付けられた大型のフィラーキャップ、昇降可能なサイドウィンドウ、より効率的なブレーキダクト、フォグランプ、サイドスクープなどによって4気筒モデルと識別できる。ボディのリアデッキ部分はグラスファイバーを手作業で積層したもので、これは13kgの軽量化に役立った。そして他の優れたレーシングカー同様、最高のパフォーマンスを追い求めてその後も継続的な開発が行われたことはいうまでもない。

カレラGTS906-011は、完成すると直ちにファクトリードライバーであるゲルハルト・ミッターの操縦で1965年ル・マン・テストデイに出走。同じ年には、ミッターとコリン・デイヴィスのドライブでニュルブルクリンク1000kmにエントリーし、9位で完走を果たす。続いてヘルベルト・リンゲがソリチュードのシュトゥッツガルトGPで3位という好成績を収めると、フランスのモン・ヴァントゥで開催されたヒルクライムのコルス・ド・コートでミッターが2位入賞を達成。山のようなトロフィーを持ち帰ることとなった。

1968年にはカリフォルニアでポルシェのディーラーを営むレーシングドライバーのヴァセック・ポラックがエンジン・レスの状態で購入。彼はこの904に4カム・エンジンを搭載すると、リバーサイド、ラグナセカ、シアーズポイント、パシフィック・レースウェイ、セブリング、デイトナ、ワトキンスグレンなどでSCCAが開催したAプロダクションもしくはGTクラスのレースに出場した。

1985年になってグンナー・レーシングの手でフルレストアが施された。このとき、エンジンはツイン・プラグ仕様の本来のフラット6に換装された。以来、この904はモントレー・ヒストリックやレンシュポルト・リユニオンなどのクラシック・モータースポーツ・イベントに休む間もなく姿を現している。

GTS 906-011をドライブする
そして今日、私たちはドニントンパークを訪れていた。空は晴れ渡っているが、身を切るような寒さだ。にもかかわらず、新シーズンに向けたテストが高速で起伏の激しいこのコースで行われるとあって、迫力満点のスポーツプロトタイプカーやフォーミュラカーが恐ろしいほどのスピードで疾走している。この日、ポルシェのスペシャリストであるアンディ・プリルに招かれた私たちは、プリル・ポルシェ・クラシックのワークショップから出てきたばかりの904/6がシェイクダウン・テストにかけられる様子を取材するためにやってきた。

ガレージに佇むカレラGTSは、とてもコンパクトながら均整のとれたスタイリングが印象に残った。ボディカラーは見慣れたポルシェ・シルバー。ホイールは初期のポルシェでよく見かけたハブキャップを持たないスチール製のように思えるが、実際には最新のマグネシウム合金製に置き換えられている。とはいえ、ポルシェのレーシングカーらしく虚飾は一切見られない。このマシンにぴったりのホイールといえる。

904/6が美しいことはいまさら言うまでもないが、機能性と耐久性を徹底的に追求したシンプルなデザインのなかにあって、唯一装飾的といえるのが金色の文字で"Carrera GTS"と描かれたリアカウル上のバッジだろう。いっぽうで、ノーズに吊り下げられた4個のドライビングライトには明確な存在理由がある。この904/6は耐久レース仕様なのだ。

編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Robert Coucher Photography:Charlie Magee

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