フェラーリの「跳ね馬マーク」誕生秘話にもつながる万年筆|AUTOMOBILIA 第5回

バラッカ=フェラーリの万年筆|AUTOMOBILIA 第5回(Photos:Kumataro ITAYA)



スティピュラ製 フランチェスコ・バラッカ記念万年筆
フランチェスコ・バラッカ没後80年を記念して1998年に製作されたのが、今回採りあげているスティピュラ社製フランチェスコ・バラッカ記念万年筆である。フランチェスコ・バラッカの生誕年である1888年にちなんで、888本の限定となっている。

万年筆業界には長い歴史を誇るメーカーが数多く存在する。簡単にいくつかの創業年を記すと、ペリカン:1832年、今日まで続く万年筆の機構を発明したウォーターマンが1884年、パーカー:1888年、モンブラン:1906年、日本のセーラー万年筆は1911年、パイロットは1918年である。

スティピュラという会社をご存知ない方も多いのではなかろうか。それもそのはず、創業は万年筆のメーカーとして新参ともいえる1973年、まだまだ歴史は浅い。ただし、否、だから、というべきか、そのつくりだす万年筆はどれも趣味性が高いものばかりで、世の万年筆ファンの心を鷲掴みにして離さない。

フランチェスコ・バラッカモデルも然り。スティピュラはフランチェスコ・バラッカが存命の頃の万年筆を徹底的に調べ上げ、当時と同じ材料と製法を守ってつくっている。付属しているイタリア語と英語が併記された小冊子には、そのあたりのことが詳しく記されていて、読み物としても楽しめる。

その他にも、冊子のなかには、エンツォ・フェラーリが書き残した原稿から、先に紹介したバラッカ家とのなれそめを記した部分だけが転載されていたり、数名のフランチェスコ・バラッカ研究家たちによる、バラッカにまつわる故事、バラッカのモットーやひととなりについての小論文が掲載されている。

ささやかなひと工夫
1998年にわたしがこの万年筆の発売を知って、ひとつだけ工夫したことがある。それは限定番号。888本の限定品であるならば、必ずシリアルナンバーが打たれるはず。ならば、せめて、フェラーリと関連のある番号のものを入手したい、と考えたのである。

早速スティピュラの製品を多く扱っている小売店に出向き、あらかじめ書き出しておいた番号を伝えた。この時、わたしが列挙した数字は次のようなものだった。

125、166、206、246、250、268、275、340、400、412、512。

数週間後、その店から希望するシリアルナンバーのものが入荷した、との連絡があった。かなりの時間が経過していたので、もう忘れられているのかもしれない、と心配になっていた頃だった。わくわくしながら、店に駆けつけると、おもむろに出された箱に手書きされた番号は246であった。この時に抱いた微妙な感じは今でも覚えている。オーダーした際は、とにかくフェラーリゆかりの番号が入手できれば、と、そればかり考えていた。いざ、候補のひとつが目の前に現れると、候補のナンバーにプライオリティをつけて渡せばよかった、と後悔が走った。246が日本に入荷したということは、250や275も入荷していたかもしれない。わざわざ輸入元とかけあって、せっかく246を探し出してくれたのに、人間とはつくづく欲深いものだ、と痛感させられた。


今回の肴
恒例により、今回も写真の説明を。

□全体のフォルム
フランチェスコ・バラッカモデルの全景。軸は黒いエボナイト製。当時バラッカが用いていたサインとシリアルナンバーが刻み込まれている。



文、写真:板谷熊太郎 Words and Photos:Kumataro ITAYA

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