車を愛する世界的建築家にインタビュー│所有するコレクションとは?

Photography: Paul Harmer

世界でも名の知れる建築家である、ノーマン・フォスターは車の愛好家でもあり素晴らしいコレクションを所有している。彼にとって車とは"アート"以外のなにものでもないと言う。

ノーマン・フォレスターのライバルと言えば、フランク・ゲーリーであろう。フォレスターを最も優れた建築家だと思っている人も少なくないはずだ。とはいっても、フォレスターとゲーリーの方向性は多少なりとも異なっている。フォレスターが得意としているのは、現代風のビジュアルを持ったビルなどだ。ほとんどの建築家は批評されたりもして、不安定な場合が多い。しかし、フォレスターは完璧に成功を収めている。彼の作品の中には、モーターレースと関りを持っているものもあり、マクラーレン・テクノロジー・センターのデザインも手掛けた。現在83歳であるが、プライベートジェットにヘリコプターも所有している。そして、特に車へ情熱を注いでいるというわけだ。



手渡されたグレーのファイルには、所有している車のリストが入っていた。1937年タトラ77や、ポルシェ グミュント、シトロエンDS デカポタブル、BMW イセッタ、クーパーS 1275、ベントレー Rタイプコンチネンタル、メルセデス・ベンツ 300SL、ワーゲンバス、ロータス VIなど...。

バックミンスター・フラーが1933年に設計したコンセプトカーである、ダイマクション・カーの2010年リクリエーションモデルも所有している。フラーはデザイナーであり、発明家であり、建築家でもあったため、フォレスターにとってはヒーローのような存在でもあるのだ。

ダイマクション・カーを見ると、エアロダイナミクスを扱うことがあまり上手ではなかったように思える。しかし、フォレスターはダイマクション・カーは非常に効率の良い車だと言う。フォードのセダンより、よっぽど長い距離を走れるのだそうだ。



一番最初に購入したクラシックは何か聞いてみた。その答えはメルセデス・ベンツ230SLであったが、それは妻のためだそう。彼自身が彼のために購入した最初の車はロータス・エランとのこと。ポルシェ930なども運転してきたが、その中でも特にマスタングが好きだと言う。

車というものはアートであるが、アートがたどり着く最後の地点ではない。真のセンスが働きかけてくる世界なのだ。彼が言うには、クラシックカーは物としての価値においてもピカソの作品と同じ立ち位置になるとのこと。スノーリゾート地である、サン・モリッツにフォレスターは家を所有しているのだが、なぜそんな雪だらけの山に住んでいるのか聞いてみた。山にいると自由を感じることが出来るし、青空と澄んだ空気のコンビネーションが好きなのだと言う。

フォレスターは未だに、カーボンフレームのバイクで競技に参戦しているほど、車だけではなくバラエティに富んだものを好む。選択できるものが多いほど喜びを感じるのだ。所有している車のラインナップを見ても、その気質を感じ取ることができる。車というものは性能だけでなく、生まれた意味や歴史も含めて魅力を持っているのだ。

Words: Stephen Bayley 訳:オクタン日本版編集部

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