ポルシェ959を最新技術で「究極の911」へとアップデートさせた執念のレストア

1988年カネパ・ポルシェ959(Photography:Mark Dixon)

リアエンジンのポルシェ959はいつもエキサイティングでありながらも、どこか、もどかしさを感じさせるスーパーカーであった。それが今、巧みなモディファイにより、往年の名車へと昇華した。

ポルシェはミスをしたかもしれない。もちろん決定的に間違っていたのではなく、「痒いところに若干、手が届いていない」という程度だ。959は世界最速の市販車であり、911から派生した最高傑作になるはずだった。

ポルシェは959を造るにあたって高い理想を掲げながら、道半ばで開発を断念したように思えてならない。リアにエンジンを搭載する911の可能性を見出すための研究開発の一環でありながら、市販車として1987年に発表された。ボディシェルの素材にはエポキシ樹脂で強化したガラスやケブラー繊維が用いられたほか、アルミニウム合金製のフロントフードやドア、ポリウレタン製のバンパーなど、軽量化のために高価な素材が惜しみなく使われた。空力特性も徹底的に煮詰められたことは、言うまでもないだろう。

機構面では、可変トルクスプリット式と呼ばれる4WDシステム、速度感応式車高調整サスペンションといった、当時のポルシェが持つ最新技術が投入された。エンジンは、1気筒あたり4バルブ、チタニウム製コネクティングロッド、さらにシーケンシャルツインターボを備え、水冷シリンダーヘッドを持つ水平対向6気筒2849ccユニットを搭載し、450psの最高出力と、500Nmの最大トルクを誇った。

世界最速の市販車はレースシーンでも活躍
こうして本物のスーパーカーが完成した。0-100km/h加速が3.7秒、0-200km/h加速が13.3秒、最高速は317km/hに達した。959はグループBのホモロゲーション取得用に生産されたが、このカテゴリーが消滅したことで、本来のクラスで活躍することはできなかった。だが、1986年ル・マンでは総合7位とクラス優勝を収めたほか、同年のパリ-ダカール・ラリーではロスマンズカラーに塗られた2台がワンツーフィニッシュを果たした。

959には、スーパーカーでありながら、ポルシェにとって重要なマーケットである北米への輸出ができなかったという商業的な問題があった。だが、959は生産台数が僅か263台だったことで、コレクターズアイテムとなるまで時間はかからなかった。また、本稿で冒頭に記した959が抱える些細な"問題点"を気する現オーナーは少ないだろうが、それを解決してくれるスペシャリストが、今回の取材対象である。

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA (carkingdom) Words:David Lillywhite Photography:Mark Dixon 取材協力:Canepa (www.canepa.com)、ロバート・オーカット

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