ポルシェ959を最新技術で「究極の911」へとアップデートさせた執念のレストア

1988年カネパ・ポルシェ959(Photography:Mark Dixon)



20年前の車を最新技術でアップデート
ターボチャージャージングの技術が格段の進化を遂げた現在、カネパの開発陣はシーケンシャルターボを捨て、最新のギャレット製ボールベアリング・ツインターボ、通称「ディスコポテト」を組み込んだ。「ディスコポテト」の名の由来は、このツインターボを採用した日産セントラのレーシングカーが、サイケデリックなブラウンに塗られていたからだ。カネパはツインターボに専用設計したウェイストゲートとTiALスポーツ製ダイアフラムバルブ、チタン製ヒートシールドを組み込んだ。

ターボの見直しに伴いカムタイミングも見直され、新たな吸気ライナーとK&Nエアフィルターを採用し、燃料供給システムにも手が加えられた。もちろん、エンジンマネージメントシステムも最新のものが奢られている。エンジン回りのワイヤーハーネスは、すべてF1基準のものに置き換えたほか、新たなセンサー類やコネクター、ヒートシールド、高出力イグニッションシステムなど、合計369点にのぼる部品を変更している。新しいステンレス製エグゾーストには純正キャタライザーを流用しながら、ボタン操作で開閉できるバイパスバルブを備え、エグゾーストノートのボリュームを変えられるようにしている。仕上げに、踏力が大きなクラッチにも手を入れ、新設計のペダルメカニズムに加えプレッシャープレートも見直し、クラッチフィールは格段に向上している。

ブルースの仕事ぶりを試す
まずブルースがステアリングを握った。959の凄まじい加速力もさることながら、驚かされるのはそのグリップ力だ。シャープなコーナーも、荒れた路面でさえも、とにかく4輪が路面を鷲掴みにしているかのように感じる。

取材車両は959のなかでも29台しか生産されなかったスポーツ仕様なので、コンフォート仕様のような車高調整システム(ブルースは単なるギミックと呼ぶ)の備えはない。959の前後独立懸架は911とはまったく異なるメカニズムだ。カネパ社ではスポーツ仕様をベースに自社開発した、シンプルな3ウェイバルブ付きダンパー、チタン製スプリングのサスペンションを採用。コンフォートの場合、これだけで70kgのバネ下重量削減を果たしている。また、カネパでは純正マグネシウムホイールを改良し、純正のランフラット以外の最新タイヤを装着できるようにしている。

「路面に食らいついて、ロケットのように加速していくでしょう」と、ブルースはにっこり笑顔を浮かべながら語る。世界で最も扱いやすい959に仕上がっているばかりか、200mphを超える速度域でも抜群に安定しているという。

200mphを超える速度域だと? 子供じみた質問かとは思ったが、諸々の数値を聞いて二度驚いた。0-60mph加速2.9秒、最高速度は222mph(357km/h)、最高出力640bhp、最大トルクは580lb-ftだそうな。いくら手が入れられているとはいえ、約20年前の車でこの数値は驚異的だ。もちろん、ブルースはこれらの数値を誇らしげに暗記していた。

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA (carkingdom) Words:David Lillywhite Photography:Mark Dixon 取材協力:Canepa (www.canepa.com)、ロバート・オーカット

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