マックイーンが愛した「XKSS」|免許を失いかねないほどLAを駆け抜けた相棒の帰還

ジャガーXKSS(Photography: Evan Klein)

希少なジャガーXKSSの中でも最も有名な一台。スティーヴ・マックイーンが愛し、走り込んだ車が、ロサンゼルスの自宅に里帰りしたところを写真に収めた。

スティーヴ・マックイーンは車とモーターサイクルを愛したが、とりわけ速く走ることに目がなかった。中でも最愛の一台といえるのがジャガーXKSSだ。その愛情は、同じ車を二度も買うほどだった。

駐車場で見初めたXKSS
マックイーンの名声は1950年代初めに高まりをみせた。やがて富を手にするようになると、長く苦楽を共にしてきたMGTCから、もっと速くて新しいスポーツカーに乗り換えようと考えた。まずはオースティン・ヒーレー、次にはコルベットでロサンゼルスの街を走り回るようになった。だが、スローダウンしてほしいと妻のニール・アダムスに懇願され、いったんはフォード・フェアレーンに落ち着いた。しかし、これが続くはずもなく、1957年にはシアタ208を購入すると、すぐにポルシェ356スピードスターとロータス・イレブンが続いた。極めつけが1958年に手に入れたXKSSだ。

この車を1957年4月に新車で購入したのは、カリフォルニア州アルタデナのジェームズ・E・ピーターソンだった。同年8月には、サン・フェルナンドのドラッグコースをXKSSで走り、その日の最速タイムを出したといわれている。ピーターソンはリバーサイド・レースウェイ設立にも関わっていた。1957年9月にオープンし、名勝負の舞台となったほか、ハリウッドが制作するテレビや映画の撮影で頻繁に使われたサーキットだ。

購入から1年後に、XKSSはラジオやテレビの司会者だったビル・ライデンの手に渡った。人気番組"It Could Be You"の司会を務めて2年目に入っていたライデンは、よくXKSSでサンセット・ブルバードのスタジオに通っていた。マックイーンは、その駐車場でXKSSを初めて見かけると、さっそく譲ってほしいと頼み始める。

ライデンが折れるまでに時間はかからなかった。次にはその交渉術で妻のニールを説得、彼女がライデンに5000ドルの小切手を手渡し、マックイーンは1958年末に念願の"XKSS713"を手に入れた。XKSSは純コンペティションカーのDタイプを公道用にコンバートしたモデルだが、Dタイプ時代のシャシーナンバーは"XKD569"だった。XKSSの新車当時はクリームのボディに赤のインテリアだった。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: David Lillywhite Photography: Evan Klein

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