BMW歴代のデザイナーたちが描いた貴重なスケッチ19枚

すべてはスケッチから始まる(Photography:Daniel Kraus)

BMWのデザイン史を遡るタイムトラベルに出かけよう。案内役を務めるのはBMWデザイン本部長、エイドリアン・ファン・ホーイドンクだ。

立体的な造形のなかに数多くの機能を詰めこんだ自動車のデザインが、実は二次元的なスケッチから生み立出されることは私たちが忘れがちな事実といえる。そうしたスケッチのなかにはカラフルに彩られ、ほとんど芸術と呼びたくなる作品も少なくない。いっぽうで、ビデオスクリーン上で作成されたバーチャルなイメージが、紙の上に描かれたスケッチと同じように自動車のデザインの基礎となることも、もはやめずらしくなくなっている。これらのスケッチにはやがて三次元的な息吹が吹き込まれ、私たちにとってなじみ深い自動車へと姿を変えていく。

しかし、ひとたびそれが製品として完成すると、当初描かれたスケッチの存在は忘れ去られ、デザインルームの奥深くにしまわれて滅多に日の光を浴びることがない。

今回、われわれはBMWの協力を得て、歴代のデザイナーたちが描いたスケッチを閲覧する機会に恵まれた。50年以上も前に作成されたスケッチも含まれる膨大なアーカイブは、BMWのデザイン・ヒストリーそのものといって差し支えない。しかも今回は同社デザイン本部長のエイドリアン・ファン・ホーイドンクがそのガイドを務めてくれることになった。ファン・ホーイドンクが語る。「皆さんは慎重に検討された末に誕生した作品ばかりと思われるかもしれませんが、なかには情熱的な英断と呼べるものもあります。そういった作品は、いま見てもとても魅力的です」

BMW 507:1956〜59年
「アーカイブのなかでいちばん最初に見たいと思ったのが、この作品でした」とファン・ホーイドンク。

「デザインしたのはドイツ生まれのアルブレヒト・フォン・ゲルツです。ただし、彼が作業を行ったのはミュンヘンではなく、ニューヨークでした。ゲルツはレイモンド・ローウィと並んで、大メーカーに属しないデザイン・コンサルタントとしてもっとも古くから活躍していた人物です。ただし、最終的な決定はミュンヘンで下されました」

「これらはごく初期のスケッチです。1950年代の作品なのでアメリカの影響を強く受けていることは否めず、それらはサイドまで回り込んだウィンドウスクリーンや大きなボディサイズなどに表れています。このようなデザインは、第二次大戦直後のドイツでは考えられなかったものです。ゲルツはキドニー・グリルのデザインをいくつか提案していますが、最終的にはきわめてユニークな幅広の形状に落ち着きました。同様の考え方はZ8でも採り入れられています。私たちは、これまでにスポーツカーのデザインで幅広のキドニー・グリルを試したことが何度もありました」(スケッチ [1]



編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Richard Bremner Photography:Daniel Kraus

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